- 解説一覧
- ギンザケ(Oncorhynchus kisutch)について
目次
基本情報
- 大きさ・重さ
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全長:60 cm
大型魚で普通 70 cm、5 kg程度になるが、IGFA(国際ゲームフィッシュ協会)の公認記録では 15.08 kgというものがある。
参考文献
- 真山紘 1989 ギンザケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 202-203.
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
最終更新日:2020-08-31 ハリリセンボン
- 分布
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天然魚は日本の海域では稀に見られる程度で、アジア側の分布は千島、カムチャッカ半島、東部シベリア。
アメリカ側ではバハカリフォルニアからアラスカ、アリューシャン列島などの沿岸に分布する。
参考文献
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- 別名・方言名
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地方名:マス・アマメ(富山県)、ギンマス(別名)
英地方名:Silver salmon
参考文献
- 真山紘 1989 ギンザケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 202-203.
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- 分類学的位置付け
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サケ目 サケ科 サケ亜科 サケ属
参考文献
- 藤岡康弘 2018 ギンザケ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. pp. 138-139.
- 真山紘 1989 ギンザケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 202-203.
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- 人間との関係
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日本では1970年頃から何回かに分けて移入され、移植放流されたが定着しなかったため、今は中止されている。
海中で養殖するためには、スモルトを海中生簀に移して行う。ギンザケを淡水で養殖し、親魚として 1.5 kg前後に育てたものから採卵している。
淡水ギンザケの採卵時期は、ニジマスとほぼ同じ10~11月頃である。その発眼卵を約1年弱飼育すると銀化してスモルトになる。11月頃、体重が 150~200 g、体長 20 cm前後になったスモルトは2~3日海水馴致を行ってから海中生簀に放たれる。このときの選別で成長の悪かった雄はその冬に小型のまま成熟し、春には斃死する。
海で飼育するギンザケは、体長の餌の投与で天然魚とは比較にならないほど成長が早い。11月から翌年6月頃には 3~4 kgほどに育つ。三陸沿岸では、夏の表層海水温が高温になる前に出荷される。現在ギンザケの養殖は三陸沿岸での海中生簀養殖が有名であるが、2011年3月11日の東日本大震災で養殖施設が壊滅的被害を受け200万尾以上のギンザケが流出した。別の地域で漁獲されているが、一部は沿岸の河川に遡上している。
淡水養殖されたギンザケは遊漁揚としても管理釣り場に放流されている。特に冬の低水温でも食欲旺盛なので、放流後すぐに釣れるというメリットがある。山梨県の本栖湖では、ヒメマスの代わりにギンザケが放流されたことがあり、70 cmを超える大きさに育って、釣獲され話題になったこともある。
今日、ギンザケは切り身で販売されているチリ産養殖魚がノルウェーサーモン(タイセイヨウサケ)と並んで有名である。チリでは国策としてギンザケ、トラウトサーモン(ニジマス)の海中養殖をしている。管理もしっかりしている上に、日本に格安で入ってくるため人気がある。
海で獲られるものは缶詰の原料となる。
三陸沿岸での養殖魚は、春から夏にかけて鮮魚として出回り、サケと同様に料理される。
参考文献
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
- 真山紘 1989 ギンザケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 202-203.
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形態
- 成魚の形質
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体高は高い。尾柄が扁平してやや太く、両顎の歯は細くて密に生えている。鰓耙数が21本前後と少ないのも特徴である。背部や尾鰭の上部に黒点が散在する。海洋生活時に尾鰭に銀色の放射状線がある。
マスノスケと似ているが、尾鰭全体に黒点が散在しない。河川生活期の斑紋はヤマメやニジマスに酷似しているが、ギンザケは背部の黒点が虫食い状になっているほか、ニジマスには尾鰭全体に小黒点があるため識別が可能である。
肉色はピンクか赤色をしている。
婚姻色は鮮やかな赤、あるいは黒みがかった赤がほとんどである。婚姻色が出始める頃は、サクラマスのようにオレンジ色を呈する魚も多い。
雄の二次性徴では吻部が伸びて鼻曲がりが顕著であり、フックノーズ(Hook nose=鈎の鼻)とも呼ばれる。
参考文献
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- 稚魚・仔魚・幼魚の形質
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稚魚はややずんぐりし、パーマークがある。
参考文献
- 藤岡康弘 2018 ギンザケ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. pp. 138-139.
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- 卵の形質
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卵径は約 5 mmである。
参考文献
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- 似ている種 (間違えやすい種)
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マスノスケ
参考文献
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生態
- 食性
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河川生活中の食性は昆虫が主食だが、回遊生活に入るとマスノスケ同様に魚食性が強くなり、イカ類を含め、ニシンやマイワシ、イカナゴなどを捕食する。
参考文献
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- ライフサイクル
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受精後、積算水温300℃余り、水温の低い天然水域では100日前後で孵化する。
卵黄消費後、春に泳ぎ始めた稚魚は川で1冬を越す。サクラマス同様の形態的・生理的変化を行い、銀化(スモルト化)して、小さな群れで海に下る。スモルト化できなかった成長の悪い個体はもう1年川に残り、翌春スモルト化して降海する。ジャックを除く全個体が海洋では一冬過ごすだけなので、成熟年齢は淡水生活期間の違いにより3年と4年である。北の地方ほど4年の割合が高い。河川残留型はほとんどいない。
夏の終わりか秋に匂いを頼りに母川回帰する。
遡上魚は秋に河口域に集まり、増水時に上流に向かう。
遡上時、3歳魚は尾叉長 53 cm、2冬を越した4歳魚は 57 cm。降海した年の秋にもう成熟して戻ってくる体重が 500 gに満たない早熟の雄もある。それらはジャックと呼ばれ、尾叉長約 30 cmで成熟し、産卵に参加する。
成熟年齢は通常3~4年、回帰魚の大きさは平均体重 4 kgとサクラマスの2倍近い。
成長は著しく早い。淡水では体長が4月に 3~5 cm、6月に 6 cm、11月に 8 cm、降海時に 11 cmになるほどで、海洋生活に入ると2歳で 40 cm、3歳で 60 cm前後になる。
参考文献
- 藤岡康弘 2018 ギンザケ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. pp. 138-139.
- 真山紘 1989 ギンザケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 202-203.
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- 産卵
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産卵期はニジマスを除く太平洋サケ属の中で最も遅く、10月~3月である。従って稚魚の浮上時期も遅い。盛期は11月~翌年1月である。
抱卵数は体長 55~74 cmの親魚で1400~3600粒。体重 500~2000 gの親魚で1000~2000粒である。
産卵場所は川の上流側、特に支流に遡上して行われる。混生する川ではベニザケやマスノスケ、テツガシラより下流で産卵する。
産卵行動は基本的にサケと同じである。小形の雄は産卵が始まると同時に突入して放精する。雌は多いときには場所を変えて、4回まで産卵するという。
参考文献
- 真山紘 1989 ギンザケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 202-203.
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- その他生態
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稚魚を北アメリカから北海道の川に移植した結果、サクラマス幼魚との生活の違いが認められた。5月下旬に体長 5 cm前後で話された両稚魚は、淵の緩やかな流れのところで混じり合って生活し、行動にも差はなかった。体長 7~8 cmに成長した夏には、餌生物の流入量の多い淵頭に大形の優位なサクラマスが、その後方の淵の前部をほかのサクラマスが占領し、ギンザケは淵の後部に分布していた。
餌の摂り方も、サクラマスが定位して流下する餌を待つのに対し、ギンザケは数十cmの範囲内で水平・鉛直方向に移動しながら流下する餌を食べる。このときほかのギンザケが近づくと追い払う。しかし、ギンザケはサクラマスからは一方的に追い払われ、自分より小さなサクラマスにさえ撃退される。
参考文献
- 真山紘 1989 ギンザケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 202-203.
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関連情報
- 味や食感
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養殖魚は、人体に害を及ぼすような寄生虫の心配がないため、刺身として生食が可能である。
参考文献
- 真山紘 1989 ギンザケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 202-203.
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