- 解説一覧
- ベニザケ(Oncorhynchus nerka)について

ベニザケ(Oncorhynchus nerka)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
【環境省】ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの
- 【 学名 】
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Oncorhynchus nerka (Walbaum, 1792)
基本情報
- 大きさ・重さ
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【全長】
降海型:60 cm、陸封型:17~30 cm
参考文献
- 真山紘@徳井利信 2001 ベニザケ・ヒメマス, 川那部浩哉、水野信彦(著) 川那部浩哉、水野信彦(監修) 川那部浩哉、水野信彦(編) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社 . pp. 191-196.
最終更新日:2020-08-27 ハリリセンボン
- 分布
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産卵場の分布はオホーツク海北部沿海地方、カムチャッカ半島、ベーリング海西部沿海地方、千島列島、アリューシャン列島、アラスカ湾と北緯40度までの北米太平洋沿岸地方である。
参考文献
- 中坊徹次 2018 ベニザケ種群, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. pp. 134-135.
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- 別名・方言名
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【地方名】
降海型:ベニザケ、ベニマス
陸封型:ヒメマス、カパッチェポ(アイヌ語名)
【英別名】
Red salmon
参考文献
- 真山紘@徳井利信 2001 ベニザケ・ヒメマス, 川那部浩哉、水野信彦(著) 川那部浩哉、水野信彦(監修) 川那部浩哉、水野信彦(編) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社 . pp. 191-196.
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- 分類学的位置付け
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サケ目 サケ科 サケ亜科 サケ属
参考文献
- 真山紘@徳井利信 2001 ベニザケ・ヒメマス, 川那部浩哉、水野信彦(著) 川那部浩哉、水野信彦(監修) 川那部浩哉、水野信彦(編) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社 . pp. 191-196.
- 中坊徹次 2018 ベニザケ種群, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. pp. 134-135.
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- 人間との関係
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ヒメマスの卵からの稚魚を1年間飼育し、スモルトを放流して国産のベニザケを回帰させようという試みが北海道の二つの河川で行われ、毎年数百匹から多いときには1000尾を超す大型化したベニザケを回帰させることに成功している。
国産のベニザケは主に支笏湖のヒメマス卵をもとにつくられている。支笏湖には最初は阿寒湖からヒメマス卵が持ち込まれたものの、のちには択捉島のウルモベツ川から大量に何度もベニザケの卵が移入されている。ベニザケの卵の最後の移入は1941年であるため、少なくとも40年間は海を知らずに、陸封型のヒメマスとして代を重ねていたことになる。
ベニザケは、赤みの強い肉色と高脂肪分によって商品価値が高い。主にアラスカ沿岸で漁獲されたものが大量に輸入されており、鮮魚や塩蔵品として消費されている。北アメリカでは主に缶詰に加工される。
参考文献
- 真山紘@徳井利信 2001 ベニザケ・ヒメマス, 川那部浩哉、水野信彦(著) 川那部浩哉、水野信彦(監修) 川那部浩哉、水野信彦(編) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社 . pp. 191-196.
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形態
- 成魚の形質
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体は細長く、尾柄がやや太い。鰓耙は細長く密生し、35本前後と多い。背部から頭部にかけて青緑色である。体側は銀白色で、腹部は白っぽい。背鰭に数個の黒色斑を持つこともあるが、ほかに黒点はない。
成熟が進むにつれ、頭部は全体に緑がかったオリーブ色、背部と体側は鮮やかな赤色、腹部はくすんだ灰赤色となる。背鰭、脂鰭、尻鰭までも赤くなるが、胸鰭、腹鰭、尾鰭は黒っぽい緑色である。
成熟した雄では、特に赤色が鮮やかであり、背鰭の前が若干隆起・側扁し、頭部の先端がのびて、上顎の先端は下方へ、下顎の先端は上方へ曲がる。
雌の体型変化は比較的少なく、体色も黒っぽい。
婚姻色が特徴的で、雄雌共に頭部と胸鰭、尾鰭を除いて美しい紅色になる。
参考文献
- 真山紘@徳井利信 2001 ベニザケ・ヒメマス, 川那部浩哉、水野信彦(著) 川那部浩哉、水野信彦(監修) 川那部浩哉、水野信彦(編) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社 . pp. 191-196.
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- 稚魚・仔魚・幼魚の形質
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稚魚期には小黒点が散在するが、成長するに従って消失する。まれに消失しないで残っている個体もいるが、薄いため視認しづらい。
また背部が緑色で、斑紋は無く、体側は銀色を呈する。約10個の卵形のパーマークが側線上に並ぶ。
参考文献
- 真山紘@徳井利信 2001 ベニザケ・ヒメマス, 川那部浩哉、水野信彦(著) 川那部浩哉、水野信彦(監修) 川那部浩哉、水野信彦(編) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社 . pp. 191-196.
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- 卵の形質
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卵は濃い橙色でサケマスの仲間では小さい方で、直径約 5 ㎜、120 g程度である。
参考文献
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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生態
- 食性
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湖で淡水生活を送るベニザケの幼魚は、プランクトン甲殻類を主要な餌として、ほかにユスリカの蛹や落下した陸生昆虫も摂る。海に出てからもプランクトン動物が最も重要な餌で、小魚やイカ類は副次的な餌に過ぎない。
このため鰓耙数はほかの種に比べ数が多く、間隔が狭い。降海期までの湖での生活はヒメマスと全く同じである。
参考文献
- 真山紘@徳井利信 2001 ベニザケ・ヒメマス, 川那部浩哉、水野信彦(著) 川那部浩哉、水野信彦(監修) 川那部浩哉、水野信彦(編) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社 . pp. 191-196.
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- ライフサイクル
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受精後6~9週間で孵化する。積算水温は480℃。水温が低い地域では孵化に時間がかかる。
孵化後は4週間ほどで卵黄を吸収し浮上する。河川内で浮上した仔魚はただちに川を降って湖に入る。ほとんどの魚は湖で1~3年過ごして海へ降る。湖で生活しているときの魚は、陸封型のヒメマスと全く区別がつかない。
数は少ないが、サケやカラフトマスのように、孵化したその年の春に稚魚で降海するベニザケの生息する河川もあるという。
参考文献
- 真山紘@徳井利信 2001 ベニザケ・ヒメマス, 川那部浩哉、水野信彦(著) 川那部浩哉、水野信彦(監修) 川那部浩哉、水野信彦(編) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社 . pp. 191-196.
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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- 産卵
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産卵は8~12月頃、抱卵数は2200~4300粒ほどである。
産卵場は主に幼魚期を過ごした湖に注ぐ河川であるが、湖岸の湧水地帯で行われることもある。ベニザケの母川回帰性の強さはよく知られており、湖に流入する多くの川の中に自らの生まれた川を認識して、正確に母川に戻ることが標識放流実験などによっても確かめられている。
産卵行動はほかのサケ属魚類と基本的に同じである。しかし湖岸での産卵は、流れがないため尾鰭を上下させても砂利を舞い上げるだけで効率が悪く、魚自身の動きで砂利を跳ね飛ばす。
回帰した親魚は5~10月頃遡上を始めるが、その時期は産卵場までの距離や産卵期によって異なる。河川滞在期間が長いものでは、上流の湖で何ヵ月か過ごした後、流入河川、あるいは伏流水のある湖岸で産卵する。また海から遡上して一気に産卵場所へと向かう群れもある。遡上が遅い群れは、河川に入ったときには既に婚姻色に染まっていることが多い。
ベニザケ放流が試みられている北海道東部の西別川では7月に、太平洋沿岸の勇払原野を流れる安平川では6月に遡上魚が獲れ始める。遡上のピークはどちらも7月で、8月末までには上り終える。
北アメリカでは、幼魚期を送った湖で3~4ヵ月の間過ごしてから産卵河川に遡上する群れから、産卵期を目前にした秋に川に入る群れまで変異が大きいという。
ベニザケは3~8年で成熟して母川回帰するが、分布の南側では4歳魚が、北側では5歳魚が多い。国産のベニザケは海でふた冬を過ごした体重約 2 kgの4歳魚が多く、1 kgに満たない3歳魚がこれに次ぐ。遡上量の多い北アメリカでは、6 kgを超す大物が獲れることもある。
参考文献
- 真山紘@徳井利信 2001 ベニザケ・ヒメマス, 川那部浩哉、水野信彦(著) 川那部浩哉、水野信彦(監修) 川那部浩哉、水野信彦(編) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社 . pp. 191-196.
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- その他生態
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アジア側では、千島列島以北、アメリカ側ではカリフォルニア州以北の上流に湖を持つ川に遡上する。特にカナダのバンクーバーに流入するフレーザー川上流のアダムス川は大量遡上することで有名である。
北海道東部の阿寒湖(阿寒川水系)とチミケップ湖(網走川水系)にヒメマス(天然魚)が生息していたことは、かつては北海道にもベニザケの遡上があったことの名残である。その他の河川にも、ごく稀に遡上した記録がある。
北海道の根室海峡に面した標津川と西別川にも遡上したことがあり、現在でも阿寒川の隣の釧路川では迷い魚と思われるものが時々見られるという。
ベニザケの天然魚は、サケ科魚類の中でも母川回帰性が最も強く、その川の支流まで正確に遡上するという特徴を持っている。
ベニザケは淡水域の湖で生活した後に海へ降るというう、サケ科魚類としては稀な生活をする。生後3~7年で成熟するが、その年齢を「5-2」(5歳魚で淡水生活2年)のように表す場合もある。
参考文献
- 真山紘@徳井利信 2001 ベニザケ・ヒメマス, 川那部浩哉、水野信彦(著) 川那部浩哉、水野信彦(監修) 川那部浩哉、水野信彦(編) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と渓谷社 . pp. 191-196.
- 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
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