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ブラウントラウト(Salmo trutta)の分類 Salmonidae
ブラウントラウト(Salmo trutta)の概要 Salmo

ブラウントラウト(Salmo trutta)

【 学名 】
Salmo trutta Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

全長:3~4歳魚で 20~50 cm、最大 107.2 cm

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

分布

天然水域では、富山県・長野県以東の湖沼や河川で観察されている。

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

和名の解説

背面にやや緑がかった茶色系の色を呈することから。

参考文献

  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

別名・方言名

【地方名】
淡水個体:ブラウントラウト
降海個体:シートラウト

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

分類学的位置付け

サケ目 サケ科 サケ属

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

人間との関係

原産地は、イギリス諸島を含む北部ヨーロッパ地方で、1883年に北アメリカに移植されたといわれている。その後、食用と釣りを目的に、国と州の手によって北半球はもちろん、アフリカ、ニュージーランド、南アメリカなどの南半球にも広く移植された。

日本へは、カワマス卵に混じって、昭和の初期にアメリカから持ち込まれたといわれるが、この年代は定かではない。当初は東京水産大学大泉実習場、青森県相坂養魚場、水産庁淡水区水産研究所(現養殖研究所)日光支所などでわずかに飼われていたが、現在は各地の養魚場でも飼育しているようである。

現在では栃木県の中禅寺湖、長野県の犀川上流、秋田県の雄物川水系、北海道の支笏湖、そのほかいくつかの河川で自然繁殖をしている。それ以外の地域でも自然産卵による稚魚の発生が確認されているが、繁殖するというほどには至っていないようである。

人工種苗は釣り用として希少価値が高いため各地で飼育され、放流されている。そこで生き残った魚が大きく成長していることも珍しくない。天然水域では、秋田県で在来魚のイワナとの交雑個体も確認されている。斑紋がブルックトラウトとの交雑魚のように、タイガートラウト模様だったとの報告がある。

在来魚の捕食や在来サケ科魚類との産卵場所の競合などの影響が危惧されている。

ニジマスほどには水産資源として一般的ではなく、在来生態系への影響が大きいことから、日本魚類学会では特定外来生物としての指定を求める意見書を繰り返し環境大臣に提出している(平成16年8月および平成27年1月9日)。

岐阜県では、飛騨市にあった養魚場から台風で逸出したブラウントラウトが定着しており、高密度で生息する場所もある。さらに、管理釣り場からの逸出などに由来する個体が庄川や長良川水系でも見つかっている(向井ほか, 2016)。

ルアー釣りの対象として人気が高い。

シューベルトの歌曲「鱒」のモデルは本種である。

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

形態

成魚の形質

成魚では体が細長く、尾柄部は比較的太い。ニジマスのように体側に赤色系の帯はないが、体側に、背鰭の基部周辺に大型の黒い斑点と、白や薄青系の色で縁取られた朱赤点が散在する。この斑点の大きさ、数、紋様、配列にはかなりの個体差があり、同じ水域に棲む魚でもその変異は大きい。また、全く赤色点のない個体もいる。

背面はやや緑がかった茶色系の色で、この色が「ブラウン」たるいわれである。腹部は白色あるいは黄色がかった色を呈する。尾鰭に黒点がないので、ニジマスとの差異が明瞭である。鰓耙数は16本前後。

なお、降海型の体色はほとんどが銀白色である。

若魚のときは、背鰭、腹鰭、臀鰭の前端が白く、イワナ属の魚に似ているが、成長するに従ってその白色も消失する。降海型はシートラウト(Sea trout)と呼ばれ、ほかのサケ科魚類同様、銀化して体全体が銀白色になる。

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

稚魚・仔魚・幼魚の形質

幼魚期はニジマスとほぼ同じ体型をしている。

参考文献

  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

卵の形質

卵は黄色味が強い色をしている。

参考文献

  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

生態

生息環境

生息域は、平野から標高約 2400 m以上の高地に至る。水が冷たく、酸素が豊富な湖沼や急深な河川の岩石の倒木の陰などである。

適水温は20℃以下であるが、27℃でも生存は可能である。物陰を好む習性があり、大岩や倒木の陰に潜んでいる。

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

食性

幼魚期には、陸生あるいは水生を問わず、昆虫、貝類、甲殻類、小魚など、小動物なら何でも摂るが、大型の成魚になるとさらに魚食性が強くなる。自分の体長の半分ほどもある大きさの魚も食べてしまう。

養魚池内では共食いも激しい。養殖ブラウントラウトの胸鰭や腹鰭が欠損しているのは、稚魚時代の共食いによるものである。

主食は魚類だが、水棲昆虫や陸棲昆虫もよく捕食し、夏期にはセミやハチなど、水面に落ちた昆虫なども食べている。

摂餌の時刻は、日中よりも朝夕の暗い時間帯を好む。

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

産卵

産卵期は生息地によって異なるが、中禅寺湖では9月下旬~11月上旬にかけて、流入河川での産卵行動が観察される。

成熟は2歳からで、雌の抱卵数は4~5歳魚で2000~3000粒である。

降海型は孵化後ただちに海へ降りるものと、河川内において1~3年過ごしてから降りるものがいる。ニジマス同様、幼魚期に外見で、降海型か河川残留型かを区別することは不可能である。

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

その他生態

ニジマスより冷水域を好むといわれており、日本での適した水温は必ずしも明らかではないが、20℃以下が好ましいようである。しかし27℃という高い水域での記録もある。

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.

最終更新日:2021-02-18 ハリリセンボン

関連情報

味や食感

調理法は、一般的にバター焼き、塩焼きなどであるが、刺身にするところもある。

参考文献

  • 奥本直人 1989 ブラウントラウト, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 148-150.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

その他

産業管理外来種である。

ブラウントラウトには亜種、ファリオ S. trutta foria とマクロスティグマ S. trutta macrostigma がいる。ともに陸封型の魚だが、特にマクロスティグマはイタリアのサルデーニャ島だけに生息する。頬に瞳とほぼ同等の大きな黒点を持ち、体側の斑点は少なく、黒点のみで赤色点はない。サルデーニャ島のカリアリ大学のカウ教授によれば、今絶滅の危機に瀕しているという。

その理由は、地球温暖化でさらに夏期の水温が上がりつつあることと、ユーラシア大陸から移入されたファリオと自然交雑を始めたからである。マクロスティグマは島に陸封された魚であるが、体側に赤色点を持つファリオと簡単に交雑してしまう。マクロスティグマが日本のイワナ同様、地域的な系統群であるならば、ファリオとの交雑も免れられない。

日本に生息するブラウントラウトにも朱点が多く、ファリオの系統群が混じっているとも考えられる。

参考文献

  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .
  • 2017 岐阜県の魚類, 第2版 - 書籍全体, 向井貴彦(著) 岐阜県の魚類, 第2版. 岐阜新聞社. .

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

種・分類一覧