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マスノスケ(Oncorhynchus tshawytscha)の分類 Salmonidae
マスノスケ(Oncorhynchus tshawytscha)の概要 Oncorhynchus

マスノスケ(Oncorhynchus tshawytscha)

【 学名 】
Oncorhynchus tshawytscha (Walbaum, 1792)

基本情報

大きさ・重さ

サケ科魚類では大きく、体長 1 m以上、体重が 25 kg以上になるものもいるが、一般には 90 cm、10 kg前後のものが多い。

最大個体では体長 147 cm、57 kgの記録がある。

参考文献

  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-31 ハリリセンボン

分布

北アメリカでは、南カリフォルニア以北の太平洋からベーリング海、アジアではカムチャッカ半島からオホーツク海、日本海北部、太平洋北部に分布(回遊)する。

北海道のみならず、岩手県三陸沿岸にも回遊し、定置網でもたびたび捕獲される。

参考文献

  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-31 ハリリセンボン

別名・方言名

英地方名:King salmon(アラスカ)、Tyee salmon、Spring salmon(カナダ)

地方名:スケマス(東北、北海道)、スケ(北海道)、オオスケ(宮城県、北海道)、ダイスケ(東北)

参考文献

  • 真山紘 1989 マスノスケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 204-205.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-31 ハリリセンボン

分類学的位置付け

サケ目 サケ科 サケ亜科 サケ属

参考文献

  • 藤岡康弘 2018 マスノスケ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 138.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-31 ハリリセンボン

人間との関係

1900年代にアメリカの技術援助により、ニュージーランド南島に移植されて定着し、現在も小規模な繁殖が行われている。またワカティプ湖など、いくつかの湖では陸封型として定着している。

日本の河川では1881年から三面川へ10万粒ずつ何回か移入され、回帰が確認された。1959年からは十勝川などで放流実験が行われたが、多少回帰が確認された程度である。回帰率が悪いので放流は中止され、現在日本には定着していない。

カナダやアラスカでは、釣りの対象としても人気で、河川に遡上した魚のみならず、ボートで海へ出て、ニシンなどの小魚を餌にした釣りは初心者でも参加できるため、盛んに行われている。

三陸以北の太平洋沿岸で、春から初夏にかけて索餌回遊中のものがしばしば漁獲される。日本海沿岸でもこの時期にわずかながら漁獲される。これらの中の北上回遊に遅れたとみられる 10 kgを超える体重の成熟魚が、新潟県の三面川に2度と、山形県の最上川と赤川に遡上したことがある。北海道ではこれまで8河川で採捕例があるが、大きな川に多い。

北アメリカでは沿岸と川でのサケ釣りが盛んで、特に大形のマスノスケ釣りの人気が高い。このための人工孵化放流も積極的に行われている。

参考文献

  • 真山紘 1989 マスノスケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 204-205.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-31 ハリリセンボン

形態

成魚の形質

海洋型は背部から頭端まで真珠光沢を持った青緑色で、銀色の体色に尾鰭も銀色を呈する。背部、背鰭、尾鰭に黒点が散在する。口内下顎の歯肉が黒い。

成熟時には全身が濃い茶色となり、黒点もはっきりする。

婚姻色は赤系や濃茶緑系、黒系など、河川によって異なるが、散在する黒点が明瞭になる。

鰓耙数は22本前後である。

参考文献

  • 真山紘 1989 マスノスケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 204-205.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-31 ハリリセンボン

稚魚・仔魚・幼魚の形質

河川生活期の幼魚は、銀色の体側の側線上に6~12個の、サケ属魚類の中で最も大きい楕円形のパーマークを持つ。背鰭に小さな黒色斑がある。

参考文献

  • 真山紘 1989 マスノスケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 204-205.

最終更新日:2020-08-31 ハリリセンボン

卵の形質

婚姻色が赤タイプの卵は橙色、黄タイプの卵は黄色である。同じ川でも両方のタイプが出現する。

卵径は大きく 9 mm前後になる。

参考文献

  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

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生態

ライフサイクル

卵は3~5ヵ月で孵化し、仔魚は約 23 mm、その後20~70日で卵嚢を吸収して 40 mm前後となる。浮上後すぐに降海するタイプと、1~2年淡水生活を過ごしてから海に入るタイプがいる。海では主に沿岸域を南北に回遊する。海洋生活は2~5年。

2歳で 60 cm、3歳で 75 cm、5歳で 1 mほどに育つ。成熟年齢は2~9年までで、多くは4~6年である。

淡水域で何年か過ごした魚は、降海時には餌の摂取が楽に行えるため、さらに大型になる傾向がある。

降海の翌年に遡上する雄もいて、体長 50 cmに満たない小型もいる。これをキングに対してジャックと呼ぶが、それでも若魚ではなく成熟している。

参考文献

  • 真山紘 1989 マスノスケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 204-205.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

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産卵

産卵期は6~12月だが、低緯度で早く、高緯度で遅い。産卵は大きな川の本流や、流量の多い支流の瀬で行われる。河川によって異なり、汽水域近くの潮汐限界から流程が長い河川最上流で行われる。

産卵場の分布は北米西岸が主だが、オレゴン州~アラスカ南部、アラスカ西部~カムチャッカ半島西岸・サハリンである。

産卵行動はサケと同様である。

抱卵数は魚体の大きさによっても異なるが、平均8000粒、体長 1 m前後で1万4000粒である。

十勝川に放流されて回帰した体重 12.5 kgの4歳魚は、7880粒の卵を持っていた。

参考文献

  • 藤岡康弘 2018 マスノスケ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 138.
  • 真山紘 1989 マスノスケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 204-205.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

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その他生態

産卵のための遡上は1年を通して見られ、遡上時期によって大まかに春、夏、秋の遡上群に分けられる。ときには冬の遡上群も存在する。特に分布の南側に位置するお大きな川にはこれらが混在し、それぞれ遺伝子的にも異なるといわれる。

春の遡上群は、3~4月頃に河川に上り始め、産卵期まで4~5ヵ月と長い淡水生活を送り、生まれた幼魚の淡水生活期間が1年間と長い。

これに対し、秋の遡上群は、8~10月に海から川に入り始め、産卵期まで約1ヵ月と短く、そして幼魚も3~4ヵ月間という短い河川生活ののちに降海する。このように、淡水生活への依存度がそれぞれ大きく異なるため、日本への移入のときには、流程の短い日本の河川での滞留期間をなるべく短くしようということから、秋の遡上群が選ばれた。

一般に早期に遡上する系統群ほど遡上距離が長く、アラスカのユーコン川には約 2000 kmも遡るものもいる。

また、アラスカのキーナイ川では、初夏にまとまった遡上が2回あり、6月中旬頃の遡上をファーストラン、7月中旬の遡上をセカンドランと呼び、セカンドランの方が遡上魚の平均サイズが大きいといわれている。

参考文献

  • 真山紘 1989 マスノスケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 204-205.
  • 2017 サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版 - 書籍全体, 井田斎、奥山文弥(著) サケマス・イワナのわかる本. 改訂新版. 山と渓谷社. .

最終更新日:2020-08-31 ハリリセンボン

関連情報

味や食感

魚体が大きく、脂がのっているため、大きな切り身のサーモンステーキが絶品である。ほかには薫製や缶詰に利用される。

参考文献

  • 真山紘 1989 マスノスケ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 204-205.

最終更新日:2020-08-31 ハリリセンボン

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