- 解説一覧
- コノシロ(Konosirus punctatus)について
コノシロ(Konosirus punctatus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Konosirus punctatus (Temminck & Schlegel, 1846)
目次
基本情報
- 和名の解説
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①焼くにおいが人を焼くにおいと似るので、焼いて「子の代」としたことから。
②『物類称呼』に、生まれた子どもが次々と死ぬ家では子の胞衣(えな)、つまり胎児を包んだ膜と胎盤とコノシロを一緒に埋めると、子は生まれ変わって育つが、その子には一生コノシロを食べさせないとあり、「子の代」としたことから。
参考文献
最終更新日:2020-06-30 En
- 別名・方言名
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ベットウ(石川)、マヅナシ(大阪)、ニブゴリン(鳥取)、アシチン(沖縄)
【出世名】ジャコ・シンコ→コハダ→コノシロ(東京)/トレンゴウ→コビラ→ヒラゴ(和歌山・三重)/チリメンジャコ→コベラ→ヒラゴ(高知)
参考文献
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- 人間との関係
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季題は<秋>
「鍛冶の火に 鰶焼くと 見て過ぎぬ 山口誓子」
「市場人に 氷片ふられ 透くこのしろ 古沢太穂」
「こころよき 酔余の舌に こはだ鮨 小林勇一」
『塵塚談』にコノシロについて、「武家は決して食せざりしものなり」とあるが、コノシロを食べることは「この城を食べる」ことになるとして嫌われ、武士はコハダと呼んだとある。
しかし『江戸懐古録』によると、太田道灌は江ノ島に詣でたときコノシロが船に飛び込んだのを見て、「九城が我が手中に入る」と逆に喜んだという。
腹部が破れやすいので、「切腹魚」といって武士の切腹のときに用いたことから忌み嫌われたと言われる。
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形態
- 成魚の形質
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体高が高く側扁する。背鰭は1基で16〜20軟条。臀鰭は19〜27軟条。腹鰭は8軟条。
背鰭の最後の軟条は後方に糸状に延びる。うろこは円鱗だが、腹縁には稜鱗が並ぶ。
側線は不明瞭である。眼に脂瞼と呼ばれる膜がある。
体側背面は灰青色で体側腹面は銀色。えらぶたの後方に黒斑がある。体側部背方の数列のうろこにはそれぞれ1黒点があり、数縦列に並ぶ。
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- 似ている種 (間違えやすい種)
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近似種にドロクイ Nematalosa japonica Regan と リュウキュウドロクイ Nematalosa come (Richardson) がある。
この2種は上顎後端が湾曲して下方を向くのに対し、コノシロは上顎は後端まで直線状を呈すことで区別できる。
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生態
- 生息環境
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沿岸や河口の汽水域に生息し、沖合にはほとんど移動しない。
春から秋は内湾の塩分濃度が低い河口域などに生息するが、冬期には湾口部の比較的深部に移動して越冬する。
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- ライフサイクル
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産卵期は春から初夏で、浜名湖では水温が12〜22℃になる4〜6月に産卵するとされている。
孵化直後の仔魚は全長 3〜4 ㎜で、頭部腹面にある卵黄は大きく、体の3分の1を占める。孵化後96時間で卵黄の大部分が吸収され、全長は 5 ㎜に達する。全長 7 ㎜を過ぎる頃から各鰭が形成され始める。
全長 10 ㎜前後に成長した仔魚はシラス幼生と呼ばれる。シラス幼生になると遊泳力が増し、大きな群れを作って浅場で生活する。
全長 30 ㎜前後に達すると、鰭条数や体色が成魚とほぼ同じになる。
その後、生後1年で全長 10 ㎝前後、2年で 15 ㎝前後、3年で 20 ㎝前後に成長する。
満1歳で成熟し、産卵行動に参加するようになる。成熟する最小個体は全長 13 ㎝前後。
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- 産卵
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産卵場所は内湾・浅場の底層域。
産卵は日没後1〜2時間の間に行われ、産卵群は一斉に放卵、放精すると言われる。
孕卵数は1歳で4万〜7万粒、2歳で13万〜15万粒、3歳で15万〜17万粒である。
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関連情報
- 味や食感
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秋から冬にかけてが食べ頃。4〜5月の春先も味がよい。
白身でさっぱりしているが、大きいものは脂がのっている。小骨が多い魚だが、酢漬けにすると骨も柔らかくなり骨ごと食べられる。
内臓は臭みが強いので薄い塩水で丁寧に洗い流してから調理する。刺身や椀種にするときは、酢で軽く締めて用いると独特の臭みが和らぐ。
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