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- マハゼ(Acanthogobius flavimanus)について
マハゼ(Acanthogobius flavimanus)
【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種
- 【 学名 】
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Acanthogobius flavimanus (Temminck & Schlegel, 1845)
基本情報
- 和名の解説
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①ハゼの古名「ハセ」は陰茎を表す語で、形が似ることから。
②漢名の「弾塗魚」から「ハゼル(爆ぜる)」意。「マ」は同類中の代表的なものを指す。
参考文献
最終更新日:2020-08-25 En
- 別名・方言名
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グング(秋田県八郎潟)、カジカ(宮城)、フユハゼ(静岡県浜名湖)、カワギス(富山、石川)、モミハゼ(愛知県三谷)、ゴズ(鳥取県米子)、イーブー(沖縄)
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- 人間との関係
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季題は<秋>
「一服の 煙草甘さや 鯊の秋 寸七翁」
「鯊の潮 茶たゝへて 満ちにけり 虚子」
「橋脚の 日だまりに釣る 鯊の潮 星野廣太郎」
『大和本草』に「肉軟脆味淡美カロシ」とあり『和漢三才図会』には「川の末の海に近い処に多くいる。いつも水底を潜行している」とある。また『魚鑑』に「<前略>その肉潔白味ひ美しといへど、少し腥し」などとしている。
現在でも東京湾はハゼ釣りの名所として有名だが、その歴史は古く、江戸時代から秋の行楽として庶民に親しまれてきた。歌麿も「ハゼ釣り舟」という題で描いている。
また『本朝食鑑』によると、江戸の武士や遊び人たちが小舟に乗って、酒をのみながら釣りを競うのは忘世の楽しみであったとある。
ハゼは釣り魚であると同時に、日常食でもあった。
東京名産の佃煮は、ハゼなどの小魚を甘辛く煮詰めたものである。江戸初期に佃島で生まれて庶民に重宝され、今日に伝わっている。もともとカルシウムが豊富な魚だが、佃煮や甘露煮にすると、さらにカルシウムが吸収しやすくなり、理想的なカルシウム源となる。また保存食にもなり、正月料理に欠かせないものである。
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形態
- 成魚の形質
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体は細長く延長する。頭部の体幹は円形だが、尾部では側扁する。
背鰭は2基で、第1背鰭は8棘、第2背鰭は1棘13軟条。臀鰭は1棘11軟条。胸鰭は21軟条。
腹鰭は1棘5軟条。ほかのハゼ類と同様、腹鰭は吸盤状となっており、その前縁に細かい切れ込みがある。
うろこは大部分が櫛鱗であるが、後頭部や頰部などに円鱗で覆われている部分がある。体色は体側背面が薄い褐色で、黒褐色の斑紋が数列並ぶ。体側腹面では白色になる。
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生態
- 生息環境
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海底が砂泥質の内湾や干潟、河口域の海底に生息する。海底にほぼ静止状態で生息しており、浮き上がることはほとんどない。
季節的な深浅移動をしており、夏はごく浅海域にいるが、水温の低下とともに深場に移動する。
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- ライフサイクル
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産卵期は東北南部で春、関東で早春、南日本で冬から早春にかけてである。
孵化直後の仔魚は全長 4.8 ㎜前後で、卵黄は小さい。全長 17 ㎜前後で各鰭の条数は成魚と同数になり、体の後半部に鱗が出現し始める。
それまで仔魚は内湾で浮遊生活をしているが、この頃から底生生活に移行していく。
多くの個体は1歳で成熟し産卵後に死ぬが、1歳では成熟せず、2歳まで生きて成熟する個体もある。
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関連情報
- 味や食感
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鮮度のいいもの、なるべく活魚を使いたい。
肉質は白身で淡白。大型のものは糸作りにして刺身、寿司だねに。淡白な味を活かすなら天ぷらがよい。
そのほか酢味噌和え、甘露煮、佃煮、昆布巻、マリネ、南蛮漬けなどにする。また、卵巣は塩辛に、干しハゼはうま味が強く汁物の出汁として用いる。
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