- 解説一覧
- イシダイ(Oplegnathus fasciatus)について
イシダイ(Oplegnathus fasciatus)
- 【 学名 】
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Oplegnathus fasciatus (Temminck & Schlegel, 1844)
基本情報
- 和名の解説
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石をも噛み砕く歯を持つ魚の意。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 56.
最終更新日:2020-06-08 En
- 別名・方言名
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ヨウダイ(神奈川県江ノ島)、タカバ(富山・福井)、ウミバス(大阪)、ワサナベ(和歌山県田辺)、アラコウ(山口)、シマゴロ(高知県清水)、ヒシャ(長崎・鹿児島)
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 56.
最終更新日:2020-06-08 En
- 人間との関係
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季題は<夏>
「石鯛を 釣る磯海 光りのびきつて 由井智子」
「石鯛や 海の男の ますらをぶり 久保波良」
『栗氏魚譜』に、「鷹の羽鯛」の名で載る。
『大和本草』ではヒサノ魚の縦筋のあるものがイシダイであると解かれている。幼魚は見慣れないものをつついてみる習性があり、これを利用して飼育し、いろいろな芸を仕込むことができる。神奈川県三崎では、泳いでいる人間をつつくので、俗に「チンポカミ」と呼ばれる。
イシガキダイとの人工交雑が行われ、「キンダイ」と呼ばれる。
釣りでは引きの強さから「磯の王者」、あまり釣れないので「幻の魚」と呼ばれる。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 57.
最終更新日:2020-06-08 En
形態
- 成魚の形質
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体は菱形に近く吻は突出する。体高は高く著しく側扁する。
背鰭は1基で11〜12棘17〜18軟条。臀鰭は3棘12〜13軟条。
口は小さく、成魚の上顎・下顎の歯はそれぞれ接合して嘴状になっている。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 142.
最終更新日:2020-06-08 En
生態
- 生息環境
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成魚は沿岸の波の荒い岩礁域の水深 50 m以浅に棲む。若魚は沖合の人工岩礁や防波堤、港の中などの比較的静穏域に生息していることが多く海藻やロープなどに付いている。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 142.
最終更新日:2020-06-08 En
- 食性
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日の出後1時間と薄暮時に最も活動し、貝類、ウニ類、甲殻類などかたい殻をもった小動物を、頑丈な顎と歯で噛み砕いて食べる。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 56.
最終更新日:2020-06-08 En
- ライフサイクル
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産卵期は4〜7月で、水温20℃前後になると行われる。
孵化直後の仔魚は、全長 2〜2.5 ㎜で頭部腹面に卵黄が存在する。
孵化後4日でほとんど卵黄を吸収して全長 3 ㎜前後になる。全長 5〜6 ㎜に成長した稚魚は、流れ藻に付いて浮遊生活をしている。
全長 13 ㎜前後で体側に5条の横帯が現れ、体高が高くなる。
体長が 3 ㎝前後になると港の船や養殖生簀の下などに移って生活する。
全長 6 ㎜前後から歯が現れ、全長 10 ㎜前後までは尖っているが、その後次第に先端が円くなり、全長 8 ㎝前後で完全に臼歯状となる。このような歯の形状の変化は、成長段階の食性を反映していると考えられる。
全長 8 ㎝を超える頃から底生生活に移行する。生後1年で全長 15 ㎝、2年で 20 ㎝を超え、3年で 25 ㎝、4年で 30 ㎝、5年で 35 ㎝、6年で 40 ㎝に達する。
全長 15〜20 ㎝の若魚は、20〜50尾程度の群れで行動することが多い。成長するにつれて単独生活をするようになる。
産卵に参加するのはオスが1歳、メスが2歳以降で、成熟する最小体長はオスが 15 ㎝前後、メスが 20 ㎝前後である。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 142-144.
最終更新日:2020-06-08 En
- 生殖行動
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孕卵数は200万粒前後で、メスは数回に分けて産卵する。
産卵場所は外海に面した沿岸域。産卵行動はまず1尾のメスを数尾のオスが追尾する。この後オスとメスが1尾ずつのペアを形成し、お互いに数回身体をすり合わせた後、メスが水面近くまで浮上して身体を反転し放卵するのに合わせてオスも放精する。
産卵は夕方から日没にかけて多く行われ、雌雄が水面に浮上し始めると人が間近に寄っても行動は左右されない。
参考文献
- 真木ほか 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 142-144.
最終更新日:2020-06-08 En
関連情報
- 漁獲方法
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定置網で漁獲されることがあるが、市場に出回る数は少ない。
参考文献
- 望月賢二 2005 , 望月賢二(著) 望月賢二(監修) 魚類文化研究会(編) 魚と貝の事典. 柏書房. 57.
最終更新日:2020-06-08 En
- 味や食感
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6〜8月が食べ頃。身が締まっており、刺身にするなら、活魚を締めてあらいや薄造りにするとよい。小振りのものは塩焼きや煮付けに、また、アラもよいダシが出るので、赤味噌仕立てにする。少し磯臭さがあるが、山椒をあしらうと臭みが和らぐ。
参考文献
- 望月賢二 1997 , 真木長彰、寺島裕晃、中村晢美(著) 阿部宗明、本間昭郎(監修) 山本保彦(編) 現代おさかな辞典. 株式会社エヌ・ティー・エス. 57.
最終更新日:2020-06-08 En
- その他
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人に馴れやすいので、水族館では調教して魚のショーに重用されている。
参考文献
- 荒賀忠一 1997 , 水野信彦(監修) 川那部浩哉(編) 日本の海水魚. 山と渓谷社. 425.
最終更新日:2020-06-08 En