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アイナメ(Hexagrammos otakii)の分類 Hexagrammidae
アイナメ(Hexagrammos otakii)の概要 Hexagrammos

アイナメ(Hexagrammos otakii)

【 学名 】
Hexagrammos otakii Jordan & Starks, 1895

基本情報

大きさ・重さ

成魚全長 65 ㎝

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最終更新日:2020-05-15 En

分布

日本沿岸各地、朝鮮半島南部および黄海に分布。

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生息状況

環境省海洋生物レッドリスト(2017)によると、瀬戸内海のアイナメは絶滅の恐れのある地域個体群(LP)に指定されている。

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和名の解説

① 鮎のように縄張りをもつことから、「鮎並(あゆなみ)」が訛った。
②『 大言海』に「鮎に似て滑らかなるをもっていうなるべし」とあり、鮎に似ることから。また『本朝食鑑』には「形が鮎に似ていることから」鮎魚女と表記するとある。
③ 「愛魚女」は「賞味すべき美味な魚」の意。
④ 「愛な女」はそのやわらかい体形から。

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別名・方言名

アブラコ(北海道)、ネウ(宮城)、シジョウ(山形)、ベロ(静岡)、モイオ(富山)、クロアイ(兵庫県諸寄)、モツ(島根県松江)、モミダネウシナイ(山口)、ヤスリ(長崎)、シュク(沖縄)

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人間との関係

『和漢三才図絵』に「播州・摂州では冬月にいるが、人はこれを賞味しない」とあり、『魚鑑』には「甘平小毒あり。俗に産婦食へば、乳汁通せず」とある。
「ガヤ釣って アブラコと妻に 覗かせる 冬子」は素人釣りの風情を表したもの。

学名の種小名に otakii とあるが、これはシーボルトの愛妾であった「お滝」に由来している。
山口県小野田市周辺でモミダネウシナイと呼ぶが、これはアイナメのあまりのうまさに百姓がモミダネを売り払ってしまった故事から来ている。
子育ての習性があるためか、乳の出が良くなるとされ、昔から妊産婦に欠かせない魚とされた。また、病人には精がつくとされる。
季題は<春>。「ていねいに 塩ふりあいなめ 潮失ふ 兵庫池人」「あいなめは 息吐く焼いて しまふべし 新谷ひろし」

[ ちゃうろ ](神奈川):三浦半島の漁村に伝わる料理で、アイナメとにんじん、玉ねぎなどを醤油で煮たもの。

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形態

成魚の形質

体は紡錘形でやや側扁する。後頭部に小皮弁があること、鱗が小さく第1と第2側線間に11〜12枚並ぶこと、及び尾鰭の後縁は直線を呈することで、アイナメ属の中で他種と区別される。
体色は一般に淡褐色〜茶褐色だが生息場所により暗緑色や灰色などに変化する。体側には複雑な斑紋があり、周りの環境と区別しにくい。
背鰭19〜21棘21〜23軟条、臀鰭21〜23軟条、胸鰭17〜19軟条、腹鰭1棘5軟条。

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似ている種 (間違えやすい種)

日本周辺には本種の他に、クジメ Hexagrammos agrammus 、スジアイナメ Hexagrammos octgrammus 、ウサギアイナメ Hexagrammos lagocephalus 、エゾアイナメ Hexagrammos stelleri と4種の近似種が生息しており、よく似ているために区別しにくい。
一般に”アイナメ”という名は、これらアイナメ属魚類の総称としても用いられる。前述4種とアイナメの見分け方は、① クジメの側線は体の両側に1本ずつであること。② スジアイナメは尾鰭が円く第四側線が臀鰭の基部を超えず、目の周りに放射状の黒い線があること。③ ウサギアイナメは尾鰭が円く第四側線が臀鰭の基部を超えること。④ エゾアイナメは第一側線が短く背鰭の棘状部の2分の1に達しないことでアイナメと区別できる。

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生態

生息環境

沿岸の浅い藻場や岩礁域に生息する。単独生活をするが、魚礁などにはよく集まる。
分布域で潜水すると、腹部を海底の岩礁や砂地に接触させてじっとしている姿を容易に観察することができる。

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食性

肉食性で、孵化直後の仔稚魚はカイアシ類などの動物プランクトンを食べ、成長するにしたがって餌も大きくなる。
成魚はハゼなど小型の魚類やエビ・カニ類、ヨコエビなどを好む。また、産卵期のメスは同種の卵を好んで捕食するとの報告がある。

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ライフサイクル

産卵期は秋から初冬。水温が16〜18℃を下回り始める時期に産卵が始まる。産卵場所は水深 5〜30 m の潮通しのよい岩礁帯あるいは転石帯で、あらかじめオスが見通しのよい高所に縄張りをつくってメスを呼び込む。
孵化直後の仔魚は全長 7 ㎜ 前後で薄い楕円状の卵黄をもち、孵化直後から活発に遊泳する。
孵化後5日ほど経つと摂餌を開始し、2〜3ヶ月の浮遊生活をした後、体長 6 ㎝ 前後で底生生活に移行する。
稚魚はアマモの生えた砂地周辺でよく観察される。生後8〜10ヶ月で全長 10〜12 ㎝ に成長する。その後、2年で 20 ㎝、3年で 25〜30 ㎝、4年で 30〜35 ㎝ になる。生後1年、体長 15 ㎝ を超えるあたりから成熟する。

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生殖行動


メスが一回に産む卵数は1000〜10000粒で、1回の産卵期に複数回産卵する。
卵は直径 2 ㎜ 前後の付着沈性卵で、岩のくぼみや海藻の茎下部に塊状に産み付けられる。
卵塊は黄褐色、淡黄色、濃緑色、紫色と変化に富んでいる。
メスは産卵後すぐ姿を消してしまうが、オスは孵化まで卵を保護し、卵を捕食しようとする生物を威嚇したり、胸鰭を使って卵に新鮮な海水を送り込んだりする。
卵塊を保護している時のオスは非常に攻撃的で、同所的に生息しているクジメやアナハゼ、他のアイナメが接近すると攻撃して卵塊から遠ざけることはもちろん、体長にして数倍のダイバーが近づいても目の前を横切って威嚇したり、体当たりしたりして卵塊から遠ざけようとする個体もある。このような個体は体長 40 ㎝ 以上のものが多く、年齢にして4〜5歳以上と推測されている。

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関連情報

漁獲方法

刺網や小型底引網などで漁獲されるが、北海道ではアブラコ篭と呼ばれる篭を沈める漁法も行われている。

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味や食感

旬は春から初夏だが、三陸ものは冬季も味がよいとされる。

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種・分類一覧