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ニシン(Clupea pallasii)の分類 Clupeidae
ニシン(Clupea pallasii)の概要 Clupea

ニシン(Clupea pallasii)

情報不足種 (DD)

【IUCN】評価するだけの情報が不足している種

絶滅の恐れのある地域個体群 (LP)

【環境省】地域的に孤立している個体群で、絶滅のおそれが高いもの

【 学名 】
Clupea pallasii Valenciennes, 1847

基本情報

大きさ・重さ

成魚全長:30 ㎝

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最終更新日:2020-06-14 En

分布

本州中部以北〜朝鮮半島、ベーリング、北極海、カリフォルニア州に分布。

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和名の解説

①「二親(父親・母親)」の意で、ほかの魚に比べ子が多いことから。
②「二身」の意で、身を二つに割いて干したものを食べたことから。
③ニシンの卵である「数の子」の語源は、アイヌ語でニシンを指す「カド」の子の意。

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別名・方言名

アトニシン、イサザニシン、エビスニシン、ナツニシン、ハナグロニシン、マツミニシン(北海道)、ニシンイワシ(富山)、へロキ(アイヌ)

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最終更新日:2020-06-14 En

人間との関係

季題は<春>
「どんよりと 利尻の富士や 鰊群来 誓子」
「鰊くさき 雨が振るなり 禮文島 黙堂」
「鰊舟に 鶏鳴とどき 暁けにけり 加藤憲曠」
「雲垂れて 鰊群来待つ 厚田村 十河和子」
「妻も吾も みちのくびとや 鰊食ふ 山口青邨」

『和漢三才図会』に「思うに鯡の状は鯯(さっぱ)似ていて、円く長い。眼は大きく赤く柔らかい。鱗は脱け易く蒼碧色。肉は白く脆く脂が多い。細い棘があって味は鰯より優れている。炙って食べたり鮓につくったりするが、糟に蔵してもまたよい。東北南部・津軽・蝦夷に最も多くいる」とあり、同じく数子の項に「鯡の子である。腹を割き鮞(はららご)を出して干したもので、黄白のものを上物とする」とある。

ニシンが書物に初めて記されたのは、室町時代の『運歩色葉集』(1584)とされているが、それ以前の各地の風土記類にも、ニシンと思われる記述があり、かなり古くから親しまれていた魚と考えられる。
春告魚の別名をもち、かつての北海道の春はニシン漁の活気に象徴されていた。北海道でのニシン漁は、1447年(文安4)陸奥国の馬之助という人物が、蝦夷松前に移住したときに始まる。その後松前藩が租税と引き換えに漁業権および商業権を、地域を限定して許可する場所請負制度を設け、繁栄したと伝えられている。
北海道のニシン漁がピークに達したのは明治20〜30年頃で、ニシン大尽と呼ばれる人たちも現れ、彼らが住む豪華な建物はニシン御殿と称された。
北海道の江差地方にはニシンにまつわる伝説も数多く残されており、予知能力を持ち、ニシンの大群が接岸することを予言した「おりい婆さん」の伝説もその一つである。婆さんが消えたあとに残された神像を祀った神社が、姥神大明神として今もある。
『ソーラン節』『江差追分』は、ニシンを題材とした民謡として知られている。

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最終更新日:2020-06-14 En

形態

成魚の形質

体は紡錘形で、体高が高く側扁する。体長は体高の4.5倍。
背鰭は1基で15〜19軟条。臀鰭は14〜19軟条。腹鰭は9軟条。
背鰭と腹鰭はそれぞれ背縁と腹縁のほぼ中央部に位置し、上下で対在している。
背鰭と臀鰭の基底の長さはほぼ等しい。尾鰭の後縁は深く湾入する。
両顎に歯はない。鱗は円鱗で大きいが薄く、体側中央部のえらぶた直後から尾柄部までに51〜54枚並んでいる。腹部の正中線上には稜鱗が並ぶ。側線は不明瞭。体色は背部が青緑色。体側腹部が銀白色。顕著な斑紋はない。

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卵の形質

球形で、直径 1.5 ㎜前後の粘着沈性卵。

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生態

生息環境

沖合の水深 200 m以浅の海域を回遊しており、一日の移動距離は 50〜100 ㎞に及ぶといわれる。
また、昼間は表層、夜は底層に日周的な鉛直移動を行なっている。
生息水温は0〜16℃。

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食性

主に浮遊性甲殻類を中心とした動物プランクトンを食べる。

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ライフサイクル

産卵期は春で、北海道では3〜6月。
孵化直後の仔魚の全長は 7 ㎜前後で細長く、卵黄は小さい。孵化後約1週間で卵黄を吸収し、全長 10 ㎜前後に成長する。孵化後約40日前後で全長 30 ㎜に成長し、各鰭の条数は成魚と同数になる。
孵化後約2ヶ月で全長 40 ㎜前後に成長し、他の稚魚と群れを形成し始める。
孵化後3ヶ月ほど過ぎ、全長 7 ㎝ほどに成長すると、沿岸の浅海域を離れて沖合へ移動する。
一般に、生後1年で全長 15 ㎝、2年で 20 ㎝、3年で 30 ㎝、10年で 35 ㎝前後に成長する。しかし、本種の成長は生息密度に左右されるため、生息場所や年級群によって変化する。生後3年前後から成熟し始める。通常、寿命は8〜10年ほどだが、中には20年近く生きる個体もある。

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最終更新日:2020-06-14 En

産卵

産卵適地は砂地と岩礁が入り交じり、ホンダワラ類などの海藻が繁茂する内湾の藻場。また、河口付近など、淡水の影響がある場所がよいともいわれている。
産卵群は大きな群れで沿岸域に来遊し、メスは尾鰭を震わせ体をこすりつけるようにして卵を産み付ける。卵はホンダワラやアマモなどの海藻に産み付けられる。
ときには周辺の岩や投棄されたタイヤ、空き缶、魚網などにも産み付けられることがある。
オスとメスがペアを組んで産卵行動をすることはないが、産卵場周辺は雄群が放出した大量の精子で白く濁り、受精率は高いと考えられる。
産卵は夜半過ぎから日の出前後の間に行われる。産卵水温は北海道で4〜8℃であるが、地方差がある。
孕卵数は3万〜10万粒。汽水湖で産卵する湖沼ニシンでは、9000〜1万7000粒と少ない。
産卵から孵化するまでの時間は、水温5℃で約1ヶ月、7℃で約3週間、8℃で約2週間。
孵化率は6℃前後が最もよく、16℃以上や3℃以下ではほとんど孵化しない。また、本種の卵は塩分の変化に強く、かなりの低塩分でも孵化率の低下は見られない。

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関連情報

漁獲方法

近年、日本近海での漁獲量が激減しているため、北洋漁業やカナダ、ロシア近海で刺網、曳網などで漁獲されたものが中心となっている。

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味や食感

脂肪分が多いので、鮮度の落ち方も早く、刺身にはあまり向かない。
塩焼き、昆布巻き、照り焼き、煮付け、煮物などの和風料理のほか、マリネやムニエル、フライなどにしてもよい。

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最終更新日:2020-06-14 En

その他

外洋性のニシンはふだんは沖合にいるが、3〜5月の産卵期には大群で接岸し、海藻などに産卵する。これを春ニシンと呼んだ。
かつては三陸沖からオホーツク海を回遊した後、北海道や東北地方の日本海沿岸に大量に押し寄せてきたが、昭和30年代になるとほとんど見られなくなった。
また、12〜4月頃茨城県の涸沼に産卵に来るものなど、いくつかの地方群がある。

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最終更新日:2020-06-14 En

種・分類一覧