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エツ(Coilia nasus)の分類 Engraulidae
エツ(Coilia nasus)の概要 Coilia

エツ(Coilia nasus)

準危急種 (EN)

【IUCN】近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

絶滅危惧IB類 (EN)

【環境省】IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

【 学名 】
Coilia nasus Temminck & Schlegel, 1846

基本情報

大きさ・重さ

全長:40 cm

参考文献

  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

分布

有明海だけに分布する。

参考文献

  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

別名・方言名

地方名:ウバエツ(有明海)

参考文献

  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

分類学的位置付け

ニシン目 カタクチイワシ科 エツ属

参考文献

  • 中坊徹次 2018 エツ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 85.
  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

人間との関係

筑後川では、1985年に河口から 23 kmの感潮域上流部に筑後大堰と呼ばれる堰が建設された。これによる取水は、エツの産卵の条件である感潮域上流部の淡水域の広がりと流量に影響している。また、この建設により、感潮域そのものも 7 km狭められ、堰操作により、流れの状況も自然のリズムを失った。

さらに、長年に渡って続けられている採砂も、感潮域の河床形態に少なからず影響していると見られ、実際、この十数年間に感潮域上流部の浮泥堆積が著しく進行している。六角川においても、河口堰が建設されており、その稼働を要求する声が強い。こちらの堰は河口に近い地点に建設されているため、稼働されればエツの産卵域はほぼ消滅する。

このような環境変化に加え、郷土料理としてのエツの人気は高く、高価なため、筑後川では産卵群を多量に漁獲している。福岡県と佐賀県の条例により、筑後川におけるエツの漁期は5~7月と定められているが、産卵期と産卵場を丸々含めた制限条例は資源や産卵の保護を意図してはいないようである。このような悪条件のもとで漁獲は目立って減少し、資源状態の悪化が憂慮されるが、漁獲量を記録する努力さえ充分にはなされていない。

このように生息条件が悪化し、野放図な漁獲が行われ、保護の努力はほとんどなされていないため、近い将来、本亜種の存続は危険な状態に陥る恐れがある。

参考文献

  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

形態

成魚の形質

体は側扁して長く、全体が銀色で、イワシ類に共通の大きな円鱗におおわれている。吻が突出し、主上顎骨が後方に長くのびている。胸鰭上方に6本の著しく長い糸状軟条がある。尻鰭は軟条数が平均89と多い。

参考文献

  • 中坊徹次 2018 エツ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 85.
  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

卵の形質

卵は、直径約 1 mmの球形分離卵で、卵黄がごく薄い青緑色を呈し、卵形の半分ほどもある大きな油球がある。

参考文献

  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

似ている種 (間違えやすい種)

中国と朝鮮半島の別亜種 C. ectenes に酷似するが、尻鰭の軟条数に違いがある。

参考文献

  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

生態

生息環境

主に、有明海湾奥部とそこに流れ込む河川の感潮域に生息する。

参考文献

  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

食性

全生活史を通じてプランクトン食で、特にかいあし類と枝角類に大きく依存する。

参考文献

  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

ライフサイクル

水温24~26℃で、約19時間で孵化する。

孵化直後の仔魚は、全長 2.5 mmである。仔魚と若い稚魚は感潮域にとどまり、有明海には出ない。

9月以降に全長約 10 cmになると有明海に降り、しばらく湾奥部で過ごし、沖合で越冬する。

生後1年で全長 17~21 cm、2年で 22~27 cm、3年で 24~30.5 cm、4年で 34 cmとなる。2歳、全長約 25 cmで成熟する。

参考文献

  • 中坊徹次 2018 エツ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 85.
  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

産卵

産卵期は6~7月で、筑後川の感潮域を遡上し、その上限に近い、河口から 20 km前後の水域を中心に産卵する。最近の佐賀県の調査では、佐賀県六角川でも産卵していることが分かっている。

その他の河川と有明海での産卵は認められていない。

産卵は、午後5時前後の比較的短い時間内に行われる。

産卵場は淡水で、卵と仔魚は発育中に徐々に下流へ流される。淡水中の卵は、静水では沈み、わずかな水の動きで浮上する。塩分1.06‰以上の海水濃度では浮上する。卵発生中に、海水濃度が塩分17‰以上になれば発生や生存に影響が生じる。

参考文献

  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

関連情報

味や食感

美味で、刺身、煮つけ、唐揚げ、酢の物など、その他多くの料理法がある。

その料理法は、筑後川地方では、郷土料理として珍重され、多くのエツ専門の料理店がある。材料のエツは、高価に取引され、5~7月の漁期に筑後川で多くの漁船がエツの刺網を流すさまは、初夏の風物詩である。

筑後川地方以外では、経済的価値は低く、雑魚としてしか扱われない。

参考文献

  • 中坊徹次 2018 エツ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 85.
  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

その他

エツ属の魚は、日本では本亜種だけで分布地も限られており、またその独特の形態から、同定は優しい。

漁獲されるのは、産卵に遡上する2歳魚と3歳魚である。

参考文献

  • 中坊徹次 2018 エツ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 85.
  • 田北徹 1989 エツ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. pp. 44-45.

最終更新日:2020-09-16 ハリリセンボン

種・分類一覧