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マダラ(Gadus macrocephalus)の分類 Gadidae
マダラ(Gadus macrocephalus)の概要 Gadus

マダラ(Gadus macrocephalus)

【 学名 】
Gadus macrocephalus Tilesius, 1810

基本情報

大きさ・重さ

全長:1.2 m

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最終更新日:2020-07-15 En

分布

茨城県沖〜カリフォルニア沖の北太平洋、日本海、東シナ海北部、黄海、オホーツク海、ベーリング海の沿岸に分布。

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和名の解説

①その皮が少しまだらであることから、マダラ(斑)の意。「タラ」と呼ぶのは頭音脱落による。
②近縁種のスケトウダラの呼び名に対し「真タラ」の意。
③「タラ」はフトハラ(太腹)の意。
④タル(足)の義か。
⑤切っても身が白いので、血の「足ら」ぬ意か。
⑥「マ」は同類中で代表的なものを指す。

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別名・方言名

タラ/ヒゲダラ(神奈川県小田原)、イボダラ(富山)、アラ(長崎)、エレクシ(アイヌ)

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人間との関係

季題は<冬>
「鱈船や 比良依り北は 雪げしき 李由」
「米倉は 空しく干し鱈 少し積み 虚子」
「たらちりや 母の灯影を すくひけり 老川露光」
「雪が入る 掛魚(かけば)祭りの 鱈の口 佐藤佳子」

『大和本草』には「寒國ニ生ス冬春多ク捕ル」とあり、『和漢三才図会』も「皮は薄く肉は白い。鰭・尾ともに軟らかく、味は甘淡で佳い」としている。
また『魚鑑』に「東医宝鑑に㕦魚(たら)の名を出し、俗に大口魚といふ。又鱈の字を用ゆ」とある。
タラは魚ヘンに雪と書き、『本朝食鑑』にも「鱈は初雪の後に取れる魚ゆえ雪に従う」とあるように、雪の季節を代表する魚。

江戸時代には縁起物として尊ばれ、将軍家へ献上された。その字にちなみ、加賀藩では「加賀白山の雪」、福井藩では「海からもつくりの雪の御献上」として贈っていた。元禄期(1688-1704)には朝廷でも賞味され、北国の大名たちがこぞって献上した。
また正月魚として弁才船で武家や商家の祝膳に上がった。タラは口から臓物を抜き取って塩を入れたもので、腹を割かないところが武士に喜ばれたという。縁起物としてタイに劣らず珍重されたのは、タラの生命力の強さや切っても血が出ないことからであろう。
マダラは貪欲な魚として知られる。なんでも手当たり次第に食べるため、カニなどの鋭い棘で胃が傷つき、それが原因で潰瘍を起こす個体も多いという。また、マダラはあまり魚を好まない欧米でもよく食用とされる。とくにカナダやポルトガルで好まれ、ポルトガルには365種類ものタラの料理があるという。

タラの漁獲量は昭和10年頃をピークに年々減少しているが、タラ漁は日本漁業の発展に大きく貢献した。大正初期に日本で初めて漁船に動力が使われたが、その新型漁船の目的はタラであった。タラを求めて漁業基地は北へ北へと拡大され、多くの漁港が開設された。また底曳漁法はタラを取るために考案されたもので、その後の漁業に画期的な影響を与え、現在も広く活用されている。
タラ漁の盛んな日本海沿岸地域では、税金の代わりにタラを納めていた村が多い。その一つ秋田県由利郡金浦町の金浦山神社には、「タラ祭り」と呼ばれる祭りがある。夜、かがり火に照らされた参道を、大きなマダラを吊るした青竹を持った若者が大声を上げながら、ほかの船より神前に備えようと競い合う、勇壮な祭りである。
祭りが終わると、参拝者にタラ汁が振舞われる。この祭りの起源は、厳冬の日本海でのタラ漁が命がけだったことによる。あるとき10数隻もの漁船が転覆し、多くの遭難者が出た。しかし漁をやめることはできず、村人たちは海の安全と犠牲者を慰霊するために神明社を建立した。そして漁師たちは、初漁の最も大きなタラを神前に備えるようになった。

[たらふく食べる]腹いっぱい食べること。タラが大食漢で、その腹が膨れていることから生まれた言葉で、「鱈腹」は当て字。同様に、いい加減なことを表す「出鱈目」や、むやみという意味の「矢鱈」も当て字である。

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形態

成魚の形質

体は紡錘形で、前頭部が大きく張り出す。体長は体高の約5倍。背鰭は3基で第1背鰭は13〜15軟条、第2背鰭は15〜18軟条、第3背鰭は15〜17軟条。臀鰭は2基で、第1臀鰭は16〜18軟条、第2臀鰭は16〜17軟条。胸鰭は18〜19軟条。腹鰭は6軟条。
口は大きく、下顎は上顎より前に出ない。下顎の先端に1本のヒゲがあり、その長さは眼径と同長かそれより長い。
うろこは円鱗で薄く、多数の溝条が走る。体色は体側背部が褐色で、不定形の暗色斑が点在する。腹部は白色。背鰭や臀鰭の縁辺は白い。

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卵の形質

直径 1.2 ㎜前後の球形。多少の粘着性をもつ。
また、卵の比重は 1.050 なので、産卵されたマダラの卵は最初浮遊するが、次第に沈降すると推測される。

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生態

生息環境

水深 200 m前後の大陸棚や大陸棚斜面の岩礁域に多い。生息水温は18℃以下。

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食性

魚類、甲殻類、貝類をはじめ、さまざまな底生無脊椎動物などを食べる。

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ライフサイクル

高緯度地方では通常、冬季に深場で産卵・越冬し、春季に浅場へ移動する。
孵化直後の仔魚は 3.5〜4.2 ㎜。
孵化後8日で全長 5.2 ㎜になり、卵黄をほぼ吸収する。全長 12 ㎜で、胸鰭を除く各鰭の鰭条がほぼ成魚と同数になる。
仔稚魚の好適な生息水温は7〜8℃。陸奥湾では8月前後まで湾内で浮遊生活し、体長 10 ㎝前後に成長すると湾外に移動する。
北海道沿岸では体長 3〜6 ㎝に成長して、7月ごろに底生生活に移行する。
その後、生後1年で体長 16 ㎝前後、2年で 30 ㎝前後、3年で 47 ㎝前後、5年で 56 ㎝前後、6年で 73 ㎝前後、7年で 80 ㎝前後、9年で 90 ㎝前後に成長する。
寿命は13〜14年といわれる。雌雄とも2〜3歳から成熟し始める。

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産卵

産卵期は冬から早春。東北沿岸では12〜2月。北海道東岸で1〜3月。北海道西岸で12〜3月。
産卵期には摂餌活動は低下する。孕卵数は体長 60 ㎝前後で120万粒、80 ㎝で330万粒。大型個体では1000万粒を持つといわれる。
日本近海での産卵場は、水深 30〜100 mの海底が平らな岩盤が硬く締まった砂泥底。
産卵は雌が放精したのち、雄が激しく反転しながら精子を放出し、卵と精子を混ぜ合わせるようにするといわれる。産卵は1産卵期に1回だけで、200〜500万粒の卵を一度に産み切って完了する。

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関連情報

漁獲方法

底引網、刺網、延縄で漁獲される。漁期は地域差があるため、市場には1年を通して入荷されるが、入荷量が多いのは秋から冬にかけて。
マダラの漁獲量は減少傾向にあり、昭和40年頃から代替品としてメルルーサなどが市場に出回るようになった。

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味や食感

タラは食べて美味しいだけでなく、薬効もあるとされる。タラの肝臓からとった肝油にはビタミンAとBが豊富に含まれ、昔から夜盲症、結核、虫下しの薬として利用されてきた。卵巣は栄養価も高く代謝機能を活発にすると言われる。

腹に弾力があり、身の色が濃く、艶があり、目が黒く澄んでいるものを選ぶ。大きいほうが大味。切り身は透明感があり、ピンク色気味のものがよい。
においの強いものは避けること。獲れたての新鮮なものなら刺身にできる。昆布との相性がいいので、昆布締めの刺身やタラ昆布汁、松前蒸しに。そのほか、タラちり、塩焼き、煮付け、汁物、ホイル焼き、でんぷなどにする。
卵は煮物や鍋物に、白子は吸い物、味噌汁、酢の物などにするとよい。

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種・分類一覧