- 解説一覧
- ホッケ(Pleurogrammus azonus)について
ホッケ(Pleurogrammus azonus)
- 【 学名 】
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Pleurogrammus azonus Jordan & Metz, 1913
基本情報
- 和名の解説
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① 北方はホッケとも読むところから、「北方の魚」の意。
② 「ケ」は魚を表す語で、「北魚」の意。
③ 北海道の開拓時代に法華経を説いていた僧侶が、この魚の効能についても一緒に説いたことから「法華」の意。
参考文献
最終更新日:2020-05-15 En
- 人間との関係
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冷凍すり身などの練り製品の材料とする。養殖魚の餌にも利用。
漁獲量の90%を北海道周辺で占める北の魚。
通年流通しているが、市場には冬場に入荷が増加する。生鮮品のほか、干物や塩ボッケなどが出回る。
季題は<秋>
「運河果つ ほつけに群るる 冬鴉 渡辺文子」
「ほっけ焼く 男らの貌 雪催(ゆきやもい) 寺尾晶」
「釣れすぎて もて余したる ほつけかな 武田清子」
「𩸽」と書いてホッケと読ませるのは、海の表層に群れる幼魚が美しい青緑色をしていて花のようだからという説と、産卵期のオスがコバルト色になり鮮やかな唐草模様が見られるからという説がある。
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形態
- 成魚の形質
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体色は背側に茶褐色から黄褐色のまだら模様があり、腹側は黄白色。産卵期にオスはコバルト色になる。体形はアイナメに似るが、背鰭に欠刻がないことや尾鰭後縁は深く切れ込むことで異なる。背鰭21〜23棘28〜29軟条、臀鰭27〜32軟条、胸鰭22〜25軟条、腹鰭1棘5軟条。
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- 似ている種 (間違えやすい種)
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近似種にキタノホッケ Pleurogrammus monopterygius がある。ホッケとよく似ているが、体に明瞭な暗色横帯があり、これが腹部まで達すること、第三側線と第四側線がホッケより短いことなどで区別できる。
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生態
- 食性
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肉食で、仔稚魚は動物プランクトンを摂餌し、幼若魚や成魚は表層生から底生の動物まで広く捕食する。たとえばオキアミ類やカニ類、スケトウダラやイカナゴの幼魚などを食べるほか、産卵期のメスはホッケの卵も好んで食べる。
生後1年半を過ぎた春には、オキアミ類などの動物プランクトンが集中する沿岸域に大量に来遊し、餌生物をむさぼり食う。
また、ニシンの産卵期にはその卵を大量に食べるので、昭和20年代以前は害魚として扱われていた。
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- ライフサイクル
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産卵期は秋から冬で、青森や秋田では11〜2月、北海道では9〜12月である。北で早く、南に行くに連れて産卵が遅くなる傾向が認められる。
孵化直後の仔魚の大きさは全長 10 ㎜ 前後で、卵黄は吸収されて小さくなっている。全長 15 ㎜ 前後で卵黄をほぼ吸収し終わる。全長 30 ㎜ までに各鰭の条数は成魚と同数になる。
仔稚魚や幼若魚は沿岸から沖合の表層で生活をしている。体長 3 ㎝ 未満の個体は産卵場周辺に浮遊するが、冬から春には体長 4〜5 ㎝ に成長して沖合の表層へ移動する。その後、生後6〜10ヵ月が過ぎる頃から次第に沿岸域に移動し、濃密な魚群を形成して索餌行動をしたのち、再び沖合に移動して底生生活をするようになる。
生後1年で 20 ㎝ 前後、生後2年で 30 ㎝ 前後に達し、その後は年間数 ㎝ ずつ成長する。生後2年目頃から成熟し始める。
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- 産卵
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孕卵数は体長 30〜50 ㎝ で3000〜3万5000粒。1産卵期間中に4〜15日間隔で2〜5回の多回産卵を行い、一回に3000〜6000粒を産卵する。
産卵場所は水深 6〜30 m 前後の岩礁地帯で、潮通しの良い沖合の島や堆(たい)周辺に形成されることが多い。
産卵は夜間に行われる。産卵期になると、オスは産卵場に縄張りを形成して、成熟したメスをその中に誘い込んで産卵を促す。
卵は球形で、直径 2.5 ㎜ 前後の粘着沈性卵。産み出された卵は他の卵と粘着しあい、直径 5 ㎝ 前後の卵塊を形成する。オスがこの卵塊に放精すると、メスは卵塊を岩の凹みや礫の隙間などに押し込んで沈着させる。
産卵後、メスはその場を離れるが、オスは餌も食べずに卵塊を守る。敵を追い払うことはもちろん、口で卵を掃除したり、胸鰭を使って卵に新鮮な海水を送り込む。
一方、メスは産卵期間中も盛んに摂餌し、ホッケの卵も好んで食べる。
産卵から孵化するまでの時間は水温5〜10℃で50〜60日。
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関連情報
- 味や食感
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魚体の大きさや鮮度によって、生鮮・加工向けの選別がされる。
30 ㎝ 以上の大きなもので、鮮度のよいものはすべて生鮮向けに、25 ㎝ 以上の中型のものは生鮮と加工用に仕分けられ、特に開き干しなどの塩蔵品に利用される。それ以下の小さなものはほとんどすり身の原料になるが、鮮度の悪いものはミール原料にされる。店頭では生食用のものは少なく、ほとんどが開き干しである。
ホッケは戦争中によく配給されたので、親しまれている反面、敬遠する人も多い。脂肪分が多く、鮮度と味が急激に低下する魚なので、保存設備が発達していなかった当時は、塩辛かったり、においがしたりしたため、まずい魚のイメージがあるのだろう。しかし、新鮮なものはかなり美味である。
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