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ナマズ(Silurus asotus)の分類 Siluridae
ナマズ(Silurus asotus)の概要 Silurus

ナマズ(Silurus asotus)

低危険種 (LC or LR/lc)

【IUCN】現時点での絶滅危険度の低い種

【 学名 】
Silurus asotus Linnaeus, 1758

基本情報

大きさ・重さ

成魚全長:60 ㎝

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最終更新日:2020-06-30 En

分布

現在ではほぼ日本全土に分布するが、関東地方に進入したのは江戸時代中期、北海道に達したのは大正時代の末といわれている。
中国大陸東部、東海岸を除く朝鮮半島、台湾などにも広く分布する。

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和名の解説

①原語「ナマヅ」のヅは古語で「ツ」。ツは、首領、首すじ、頭などの意で、のちにヅとなり頭を表す語になる。「ナマ」は、なめらかな意。
また「ツ」「ス」「ヅ」「ス」は魚名語尾で、「ナマヅ」「ナマズ」は、「なめらかな魚」と解される。
②ナメハダウオ(滑肌魚)の意。
③ナメリデ(滑手)の意。
④ナマツ(魚不味)の意。

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別名・方言名

マナマズ/カワッコ(千葉県豊成)、ショウゲンポ(千葉県長生)、ザシン(富山)、アカナマズ(滋賀県琵琶湖)、ナマズノヘッタゴ(和歌山県紀ノ川・辰ヶ浜)、ヤッコナマズ(鳥取)、ナマンズ(山口県吉野)

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分類学的位置付け

ナマズ属のナマズは、日本には4種おり、ほかの2種はいずれも琵琶湖の特産種である。
これらのうちイワトコナマズ Silurus lithophilus は琵琶湖北部の岩礁地域に棲み、ナマズの中で最も美味とされている。もう1種は日本最大のナマズで、全長 1 mに達するビワコオオナマズ Silurus biwaensis である。このナマズは不味とされている。
2018年、日本中部から新たに国内4種目のタニガワナマズ Silurus tomodai が発見された。

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人間との関係

季題は<夏>
「くらがりの 桶の中なる 鯰かな 九江路」
「ごみ鯰 泥をけたてゝ うせにけり 都穂」
「泥川に 月夜に泛きぬ 大鯰 青木月斗」
「鯰の子 己が濁りに かくれけり 五十崎古郷」

『今昔物語』に大ナマズの話がある。出雲市上津の古寺、出雲寺の住職である浄覚は夢枕に立った亡父から、生前の悪業の報いで大ナマズになり、出雲寺の屋根裏の水たまりにほかの小魚とともに苦しんでいるので、近くの桂川に逃がしてくれと頼まれる。
亡父は明後日に嵐が来て寺が倒されるとも予言し、その通りになって小魚とともに大ナマズが屋根裏から投げ出されたが、浄覚は助けずにナマズを食べてしまう。そして、大骨が喉に刺さって死んでしまうという話である。

ナマズは古来、地震を予知するといわれているが、確証はない。室町時代の画家如拙の作に、現在は京都の妙心寺の退蔵院に保管されている「瓢鮎図」というのがある。
鮎はナマズのことで、小川に泳ぐナマズを、男がひょうたんで押さえようとしているところが描かれており、ナマズを押さえて地震を防ごうとしているものである。このほか、ナマズが池の中で暴れまわっている地震の絵や、ナマズ押さえの郷土玩具などがあり、昔から、地震はナマズが起こすと考えられていたことがわかる。

1855年(安政2年)に起きた安政大地震を契機に出回った浮世絵「鯰絵」は、幕府の発禁令にも関わらず、地底の大ナマズが地震を引き起こすという民間信仰にのって江戸市中を賑わした。「鯰絵」では、地震を起こすナマズは破壊者であると同時に、新しい世の中を創造する救済者として描かれている。多くは相次ぐ天災や政治の混迷などに対する民衆の憂さ晴らしに使われ、一部で地震の護符や守り札とされた。

ナマズと地震を結びつけて伝えたのは江戸時代の鹿島神宮の神人で、鹿島神宮奥宮の東南200メートルほどのところに地中深く埋まった「要石」の功徳を吹聴した。この石が地下のナマズを押さえつけているとし、「鹿島の事触れ」といって、鹿島大明神のお告げと吉凶を触れ歩き、地震の予言やお祓いをして回ったという。

現在では、1988年3月18日未明の東京直下型地震の二日前に、葛飾区水元公園の水産試験場のナマズが二度にわたって大暴れし、新聞にはナマズが地震を予知していたと報じられた。さらに、1984年11月にも、浜松市の新川で千数百尾のナマズが水面を跳ね、東海大地震の前兆ではないかと騒がれたが、これは河川の改修工事のため避難したものとわかり、ナマズが地震の前に興奮状態になるかどうかははっきりしない。

『大和本草』に疾病にナマズを食べるとよく治るとある。『魚鑑』には、むくみをとり、利尿作用があるとする。菅俣吉之助『民間薬として古来伝承される水産物』によると、ナマズのみそ汁は黄疸、肺病、心臓病、利尿、マラリアによいとされる。

近江の湖中には大ナマズが多く、仲秋の月明かりの夜には百千と群れをなして竹生島の北の州の砂の上に跳ぶが、これは弁財天が愛するからだとする伝説があるという。
『竹生島縁起』に、弁財天の化身である竜が大ナマズとなり、難波から来た大蛇を湖中に引き込んだという話があり、そこから来たものと思われる。これらは別種のビワコオオナマズやイワトコナマズを指すと思われる。

体が大きく、夜に活動するところから、大酒飲みにたとえられ、咄本『臍の宿替』で鯰になる弁慶のくだりには、「一寸是から北の瓢箪屋、どっこいそいつは大禁物、ぬらくら鯰がとめた、とめた」とある。

諺に「鯰に瓢箪」というのがあるが、捕まえにくいこと、とらえどころがないこと、要領を得ないことの意。

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最終更新日:2020-06-30 En

形態

成魚の形質

オリーブがかった不規則な斑紋が体全体を覆うが、色彩は変異に富む。
頭部は縦扁し、下あごが上あごより突出している。背鰭は小さいが、尾鰭は著しく長い基底を持ち尾鰭に繋がる。
尾鰭は後縁の中央がくぼみ、長さのほぼ等しい上葉と下葉に分かれる。体側を縦走する側線のほかに縫い目模様のように横列する側線がある。
孵化したばかりの仔魚には、上あごに1対、下あごに2対のひげがあるが、数 ㎝に成長すると下あごの1対は消失し、成体では上あごと下あごに1対ずつひげがある。

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生態

生息環境

河川の下流部、湖沼に生息。

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食性

夜行性で、水面近くの小魚やカエルなどの小動物を下面から攻撃、捕食する。

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ライフサイクル

産卵期は初夏。増水した浅場に移動し、オスがメスの腹部に巻きつき、直径 3 ㎜ほどの粘着卵を産む。

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関連情報

漁獲方法

おもに釣りで漁獲される。
生きたカエルを使った「ポカン釣り」は有名。夏の日没後に杭や水草などの障害物の近くの水面を、糸先にくくりつけたカエルで叩いて、誘い出して釣る。竿は長さ 5〜6 mの川釣り用のものがよい。
ほかにミミズを使ったミャク釣り、延縄式の置き釣りも行われる。置き釣りは1晩そのままにして沈めておくと、向こう合わせでかかってくる。

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養殖方法

ナマズは稚魚のときに共食いが激しく養殖が難しいが、栃木県立馬頭高校の水産科教諭岡英一氏は、孵化直後からミジンコとヒラメ用の人工飼料を併用して与えると共食いが防げることを発見し、稚魚の大量生産に成功している。
オスとメスを水槽に入れても交配しないため、双方にホルモン剤を注射して交配させる。人工飼料に慣れると、池や水槽でも順調に育つという。

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味や食感

白身で脂肪分が少なく、味は淡白。
肉質はなかなかよく、ヒラメのエンガワにあたる担鰭骨のそばにある筋肉も旨い。
ただし、生臭さがあるので、これをいかに抑えるかがナマズ料理のポイントとなる。

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種・分類一覧