- 解説一覧
- ハス(Opsariichthys uncirostris)について
ハス(Opsariichthys uncirostris)
- 【 学名 】
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Opsariichthys uncirostris (Temminck & Schlegel, 1846)
基本情報
- 分布
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琵琶湖・淀川水系(大和川水系を含む)と福井県三方湖(絶滅した可能性が高い)に自然分布する。
国外では、朝鮮半島、アムール川水系以南、海南島に分布する。
参考文献
最終更新日:2020-07-08 ハリリセンボン
- 亜種・品種
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ハスは1属1種であるが、側線鱗数や鰓耙数の相違をもとにして、アムール川系のものは亜種コウライハス(O. u. amurensis)、朝鮮半島及び長江以南のものは亜種馬口魚(O. u. bidens)、日本のものは亜種 O. u. uncirostris と区別されている。
しかし、3亜種の区分については、相互の関係を含め検討の余地がある。
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- 人間との関係
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ハスは本邦産コイ科魚類の中で、唯一魚食性を示し、移入先での在来魚類への悪影響が懸念されていた。
福岡県においても在来淡水魚、特に水産上重要な魚種であるアユやオイカワへの食害が確認されたことから、一部の河川では漁業者による駆除も試みられたものの、効率よく採捕することができていない。
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形態
- 成魚の形質
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体は細長く、側扁している。口裂は大きく「へ」の字に曲がる。体は背面が青褐色、体側と腹側は銀白色をしている。口は吻端に上を向いて開くが、下あごは吻端で突出し、その両側にくぼみがあって、上あごと咬み合っている。体側には下方に湾曲した側線があり、えらぶたの直後から尾柄まで連なっている。
側線鱗数は琵琶湖のものでは49~60、三方湖のものでは45~54である。
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生態
- 生息環境
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自然生息域は琵琶湖、淀川水系及び福井県の三方湖に限られている。
しかし、1923年に開始された琵琶湖産アユ種苗放流事業により、アユ種苗に混じって全国の河川・湖沼に移入・定着しており、福岡県においても矢部川水系,筑後川水系、遠賀川水系の本川、及び流域の支川、湖沼で定着が確認されている。
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- 食性
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仔稚魚期にはプランクトン動物、主としてミジンコ類を食べているが、体長 6 cmで魚食を始め、18 cm以上の成魚では消化管内内容物の90%を魚類が占める。琵琶湖ではアユ、ヨシノボリ類、コイ科の稚魚をよく食べている。
口の「くへ」字形の歪みも、魚食性が強くなるにつれて極端になることが観察されているが、これはくわえた獲物を逃がさないための適応と思われる。
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- 産卵
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産卵期は5~8月、雄は頭部・腹部・各鰭が赤紫色になり、頭部・尾柄部・臀鰭に追星が出る。流入河川を遡上して川底の砂礫に沈性卵を産む。受精後2~3日(水温21~24℃)で孵化する。
琵琶湖では1歳で体長 5~6 cm、2歳で 10~11 cm、3歳で 13~16 cmになり、多くは3歳で成熟する。三方湖のハスの成長は琵琶湖のものに比べるとやや悪く、全体に小形であり、岡山県の児島湖ではさらに成長が遅く小形である。
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- 特徴的な行動
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魚を追って捕食することから、成魚の行動は活発で、驚くと水面に飛び出し、船の中に飛び込んできたりする。琵琶湖沿岸の近江舞子で産卵期に行われるハス地曳網では、網がしぼられてくると盛んに跳ねて、網から飛び出すものも多く、そのさまは壮観である。
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- その他生態
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琵琶湖個体群と三方湖個体群の間に、分子遺伝と形態形質(尾柄長、側線鱗数、側線下方横裂鱗数)に違いがある。
遊泳力と移動速度も大きく、近江舞子で、標識をつけたハスを放流して、その後湖岸の各地で漁獲されたものから標識を回収したところ、2日後には対岸で、1週間後には最北部で漁獲され、およそ1ヵ月で湖のほぼ全域に分散することが判明した。
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関連情報
- 漁獲方法
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原産地である琵琶湖においては、産卵のために湖岸に接岸してきた親魚をハス網と呼ばれる地曳き網の一種で獲る漁法、及び河川に産卵遡上した親魚を梁で獲る漁法の2つにより漁獲されている。両者とも産卵期に産卵のため集まってきた親魚を獲る方法である。
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