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ムツゴロウ(Boleophthalmus pectinirostris)の分類 ハゼ科(Gobiidae)
ムツゴロウ(Boleophthalmus pectinirostris)の概要 Boleophthalmus

ムツゴロウ(Boleophthalmus pectinirostris)

絶滅危惧IB類 (EN)

【環境省】IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

【 学名 】
Boleophthalmus pectinirostris (Linnaeus, 1758)

基本情報

大きさ・重さ

・成魚全長 :約 13 ㎝
・卵の大きさ:長径 1.4 ㎜ 短径 0.8 ㎜

参考文献

  • 明仁@坂本勝一@池田祐二@藍澤正宏 2013 ハゼ亜目, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 1347-1608.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

分布

有明海、八代海北部、朝鮮半島南西部、台湾北岸・南岸、浙江省~海南島北部の中国沿岸

参考文献

  • 松井彰子 2018 ムツゴロウ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 392.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

生息状況

2019年度の環境省のレッドリストでは絶滅危惧種ⅠB類(EN)に指定されている。

ムツゴロウは生息環境の悪化と漁獲の影響で個体数が減少した。それを受け保護対策がとられた結果、現在では比較的安定した状態を維持している。しかし、諫早湾の開発に見られるように、干潟の消失による生息地の減少や環境の悪化などの脅威は依然として存在している。

参考文献

  • 細谷誠一 2000 ムツゴロウ・トビハゼ・トカゲハゼ, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 166-167.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

保全の取り組み

個体数の減少を受け、1986年以降は漁獲規制や禁漁区の設置などの保護対策がとられてきた。また、佐賀県では同年以降ムツゴロウの増殖に取り組み、その技術はほぼ確立されている。

参考文献

  • 細谷誠一 2000 ムツゴロウ・トビハゼ・トカゲハゼ, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 166-167.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

人間との関係

有明海特産品としての水産的価値があり、さらにそのユニークな形態と動作が有名である。本種を含む半陸水性のハゼはいずれも河口や内湾の奥に広がる泥干潟に生息するため、人間生活の拡大による干潟の埋め立てや水質の悪化などの影響を受けやすく、各地で生息地の消滅や生息数の減少が問題となっている。

参考文献

  • 細谷誠一 2000 ムツゴロウ・トビハゼ・トカゲハゼ, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 166-167.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

形態

成魚の形質

体は暗灰色で、頭、体、鰭に青く輝く斑点が散在する。眼は突出し、眼下に眼を収納するくぼみがある。魚類には珍しく下眼瞼(下まぶた)がある。

腹鰭に膜蓋がない。頭部や体に無鱗だが、円形あるいは楕円形の小瘤板で密に被われる。

参考文献

  • 松井彰子 2018 ムツゴロウ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 392.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

稚魚・仔魚・幼魚の形質

本種の稚魚は有明海で同時期に採れるハゼ科タビラクチの稚魚と似るが、尾部の体腹縁に並ぶ黒色素胞がより少ないことで識別できる。

参考文献

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

卵の形質

楕円形。干潟の泥中に掘られた孔道の産卵室壁に産み付けられる。

参考文献

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

生態

生息環境

河口に広がる軟泥干潟に巣穴をほって生息する。また、卵から孵化した稚魚は比較的岸に近い水路内や河川河口の感潮域で浮遊生活することが知られている。

参考文献

  • 松井彰子 2018 ムツゴロウ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 392.
  • 細谷誠一 2000 ムツゴロウ・トビハゼ・トカゲハゼ, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 166-167.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

食性

成魚は泥表面の珪藻類を食べる。浮遊期の幼魚はプランクトンを食べて成長する。

参考文献

  • 松井彰子 2018 ムツゴロウ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 392.
  • 細谷誠一 2000 ムツゴロウ・トビハゼ・トカゲハゼ, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 166-167.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

ライフサイクル

産卵期は有明海で5月上旬~8月上旬である。雄は泥上でジャンプして雌に求愛し、雌を自分の巣穴にさそう。雌の産卵後も雄は巣穴に残り、卵が孵化するまで世話を続ける。

孵化仔魚は約30~50日間の浮遊生活を経て、全長 1.5~1.8 ㎝で着底する。秋には全長 5~6 ㎝となり、満1歳で約 8 ㎝、満2歳で約 11 ㎝、満3歳で約 13 ㎝まで成長する。4歳以上になる個体は少ない。2歳で成熟し、産卵を行う。

参考文献

  • 松井彰子 2018 ムツゴロウ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 392.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

活動時間帯

干出時は巣穴近くの泥上をはって泥表面の珪藻類を食べる。このとき、皮膚や口腔内面から酸素を取り込み空気呼吸する。(松井, 2018, 392)

潮が満ちると巣穴の中にこもる。ムツゴロウの生息孔は最大で深さ 1.5 mに達し、入り口は2~3個、中心となる縦穴にいくつかの横穴がつくられている。(細谷, 1998, 166)

参考文献

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

産卵

雌は巣穴内の産卵室の天井に産卵する。産卵後は雄が産卵室に残り、卵が水没しないように頻繁に空気を運び込み、孵化まで卵を保護する。

産卵室の地表からの深さは夏に向かって徐々に深くなる傾向があり、干潟表面の高温を避けるためと考えられている。

参考文献

  • 松井彰子 2018 ムツゴロウ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 392.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

その他生態

半陸上生活に適応したハゼ類であるムツゴロウやトビハゼの仲間は、水中生活をするハゼ類と大きく異なる特徴をいくつかもっている。

1つめは引っ込めることができる突出した眼で、干潟上を遠くまで見通すのに用いられる。

2つめは、ほかの多くの魚類と比べ皮膚呼吸の比率が高いことである。ただし、陸上にいる間も袋状になった鰓蓋のなかに水を貯えて鰓呼吸も行っている。

3つめの特徴は胸鰭を前脚のように使い、尾部を引きずりながら匍匐前進をすることである。急ぐときは尾部をくねらせ、前方へジャンプする。

参考文献

  • 細谷誠一 2000 ムツゴロウ・トビハゼ・トカゲハゼ, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 166-167.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

関連情報

漁獲方法

佐賀県では漁獲対象種であり、ムツ掛漁などの伝統漁法が知られる。

参考文献

  • 松井彰子 2018 ムツゴロウ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 392.

最終更新日:2020-08-21 ひろりこん

種・分類一覧