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ウグイ(Tribolodon hakonensis)の分類 Cyprinidae
ウグイ(Tribolodon hakonensis)の概要 Tribolodon

ウグイ(Tribolodon hakonensis)

【 学名 】
Tribolodon hakonensis (Günther, 1877)

基本情報

大きさ・重さ

全長:30 ㎝

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最終更新日:2020-07-01 En

分布

ほぼ日本全国に分布するが、四国の瀬戸内側の一部や琉球列島にはいない。
国外では、南千島、サハリン、アムール川流域と、沿海州から朝鮮半島東岸までに分布する。

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和名の解説

①イグヒの転か。
②ウツグヒ(空食)の略。
③ウミゴヒ(海鯉)の義。
④鵜が食う魚の意。
⑤常に水底を離れて水面近くを泳いでいるから「浮いている魚」の意で「浮魚(ウクイ)」。

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別名・方言名

ハヤ、アカハラ(生殖時に腹が朱赤色になったもの)/ シオジャッコ(青森)、ノヲ(仙台市広瀬川)、クキ(群馬)、アイソ(栃木・茨城)、ウゴイ・ホンバヤ(東京)、アカウオ(長野)、オゴイ(石川)、イス(兵庫)、イゴ(山陰)、スプン(アイヌ)

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人間との関係

『延喜式』に、大和国吉野では随時朝廷に進物としていたとある。
『源平盛衰記』には、大海人皇子とウグイとを結びつけた話がある。大海人皇子が奥吉野の岩屋にこもっていると、国栖人の一人が粟飯とともにウグイを献上してきたことがあったため、天皇として即位後もこれを記念して元日の祝いに国栖人から粟飯とウグイが届けられたというもの。
『魚鑑』に「状こひ似にて痩せ、鱗細く色青白(あさぎ)肉白うして刺(こほね)多く味ひよからず」とあり、水腫を利し、湿をはらうとされる。

宮城県北上川上流のある寺ではウグイを不動尊の使いとし、福島県の山中の川では木屑を投げたらウグイに変身したという伝説がある。

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形態

成魚の形質

ウグイ属の魚を本格的に見分けるのは、産卵期以外は案外に困難である。
産卵期には、吻端から頬、体側腹方を通って尾柄に至る1条、肩部から側線上の1条、眼の後縁部から体側背方、尾柄基底に至る1条の計3条の赤い縦条が現れる。
これら3条に囲まれたところは黒帯となる。追星はほぼ全身に出るが、頭部と体部背面のものが顕著である。
背面のそれぞれのうろこの中央部には1個の大きな追星があり、2個ある場合は体軸方向に並ぶ。臀鰭の後縁はわずかに内湾する。浮き袋の後端は細くとがっている。
背鰭より前部の鱗数は37枚以下。

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稚魚・仔魚・幼魚の形質

前期仔魚は全長 6.5〜11.0 ㎜。筋節数43〜46。体はかなり細長い。
孵化後1週間の全長 10 ㎜の仔魚では、まだ卵黄は腹部にかなりの部分を占めるが、脊索の後端はすでに上屈し、尾鰭鰭条が現れている。
黒色素胞は体側筋の背腹両縁に並ぶ。背中線上のものは2列あり、頭頂部から尾鰭基底まで整然と並ぶ。

後期仔魚は全長 11〜20 ㎜。筋節数は変化なく、約45節。卵黄は吸収し尽くされ、不対鰭が次第に整ってくる。背中線上の黒色素胞は4列に増える。

全長 20 ㎜を越えると稚魚になり、体側の黒色縦帯が現れ、頭頂部の黒色素胞は顕著なハート形を構成する。全長 30 ㎜で鱗が完成し、ほぼ本種の特徴が出揃う。
頭部側線系の形成は全長 50〜60 ㎜まで続くが、眼下管は眼上管、および前鰓蓋下顎管に終生連絡しない。

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卵の形質

卵は、礫中に産み込まれ、砂利の裏などに付着する。淡黄色で、吸水すると約 2.5〜3.0 ㎜となり、ウグイ類の中でもっとも大きく、さらにコイ科の中でももっとも大きい部類に入る。

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生態

生息環境

ヤマメ(サクラマス)やイワナ(アメマス)と同様に、淡水型と降海型とがある。

淡水型は河川の上流域から河口域、山あいの湖沼などに広く分布し、ほかの魚の棲めないような pH3 という強酸性の水域にも生息する。
降海型は汽水域から内湾、外海の沿岸部までに見られる。北方ほど降海型の比率が増すこともヤマメやイワナと同様である。なお沿海州や朝鮮半島には淡水型は生息しないようである。

淡水型は2〜4年ほどで成熟するが、南方ほど成熟するのが早い。
降海型は、孵化後1年から数年を河川で生活してから降海し、1年から数年の海洋生活ののちに河川に遡上して産卵する。やはり南方ほど降海年齢や成熟年齢が早い。また北海道などでは、冬に河川に再遡上する越冬回遊も知られている。

河川では主として淵に棲むが、群れで平瀬に出て、付着藻類や水生昆虫をついばむことも多い。また水面の落下昆虫もよく食い、ほかの魚やけものなどの死骸にも集まる。小魚なども追いかけるほか魚卵も好み、サケ・マス卵の害魚とも言われている。すなわち典型的な雑食性の魚である。

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食性

雑食性で昆虫、付着藻類、小魚、動物プランクトンなどを貪食する。

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ライフサイクル

産卵期は春から夏にかけてであるが、九州で2〜3月、北海道で6〜7月で、北方ほど遅い。本州では桜の開花期に一致する。北海道では雪解けの増水がおさまり、水温が12〜13℃になったころに河川を遡上し始め、産卵場へ向かう。

孵化までに約1週間かかり、仔魚は体長約 5〜7 ㎜、まだ多くの卵黄をもち、砂利中に隠れている。さらに10日ほどで卵黄を吸収し、体長が 10〜12 ㎜になると砂利中から浮上する。そして浅瀬に群がり、ちぎれた藻類などを食うようになる。20〜30日で 2〜3 ㎝の稚魚に成長し、1年で 5〜10 ㎝の大きさになる。

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産卵

産卵場は河川の瀬で、毎年だいたい場所が決まっている。特に雨後の増水で洗われた浮き石状態の礫底が好まれ、1産卵期中、降雨ごとに数度集中して産卵する。

産卵は1尾の雌に多くの雄が追尾して行われる。これらの雄は盛んに雌にすり寄り、産卵を促す。やがて雌は、前進しながら頭を砂利に突っ込むようにして川底をすり抜け、腹を礫中に沈めて体をそらし気味に卵を産む。同時に雄もせいいっぱい体を擦り寄せて放精する。まわりの雄もいっせいに頭を突っ込んで水しぶきをあげ、産卵に加わる。
この間数秒の出来事である。周りから飛び込んだ雄の中には、産んだばかりの卵を食ってしまうものも多い。

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関連情報

漁獲方法

千曲川では、浅瀬に集まって産卵する習性を利用して投網で捕獲する「つけば漁」がある。これは、ウグイの集まりそうな場所に人為的に産卵床をつくってやり、そこに魚を集めて文字通り一網打尽にするという漁法。

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最終更新日:2020-07-01 En

味や食感

海の遠い山間部では祝いの席に用いられる魚で、白焼き、塩焼き、魚田、甘露煮、フライなどにする。わたの鮮度が落ちやすいので腹のしっかりしたものを選ぶ。ぬめりが強く透明感のあるものが良い。

俗に「夏のウグイは食うべからず」と言い、夏季は寄生虫がいることがあるので生食は避けたほうがいい。産卵後の黒い「追星」の出ているものも避ける。小さめのものの方が美味とされる。焼いたものを保存してだしにも用い、煮物に入れたり、鍋物のだしとする。

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種・分類一覧