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イトウ(Parahucho perryi)の分類 Salmonidae
イトウ(Parahucho perryi)の概要 Parahucho

イトウ(Parahucho perryi)

【 学名 】
Parahucho perryi (Brevoort, 1856)

基本情報

大きさ・重さ

全長:100~150 cm

参考文献

  • 川村洋司 1989 イトウ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 93-96.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

分布

日本最大の淡水魚といわれ、かつては本州北部にも分布していたが、現在では北海道にのみ分布する。特に北海道東部および北部の、湿地帯のある河川の下流域や湖沼に多いが、近年は生息数が激減している。

国外では、南千島、サハリン、沿海州から知られている。

参考文献

  • 川村洋司 1989 イトウ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 93-96.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

別名・方言名

地方名:オヘライベ・チライ(アイヌ語)

参考文献

  • 川村洋司 1989 イトウ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 93-96.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

分類学的位置付け

サケ目 サケ科 イトウ属

参考文献

  • 川村洋司 1989 イトウ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 93-96.
  • 亀甲武志 2018 イトウ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 129.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

人間との関係

堰堤による移動阻害、河川改修、農地開発などの生息環境の悪化、釣り人による乱獲、移植ニジマスのイトウ産卵床の掘り返しなどが原因で減少している。

現在、比較的安定した個体群が6水系、少数個体の絶滅危惧個体群が5水系のみである。

水系間で成熟サイズは齢構成、遺伝子特性などが異なり、別の水系への移植放流をしてはいけない。産卵期のイトウ釣りを控えるよう呼びかけられている。

参考文献

  • 亀甲武志 2018 イトウ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 129.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

形態

成魚の形質

体背は褐色ないし黒褐色で、全体に小さな黒色斑が多数散在する。体側は銀白色で、腹面は白色をしている。

頭部背面は扁平で、体高は比較的低く、全体に細長円筒形である。背鰭は吻端と尾鰭基底とのほぼ中央にあり、尾鰭後縁の切れ込みは深い。

雄は成熟すると全体的に赤みを帯びて、婚姻色になる。

参考文献

  • 川村洋司 1989 イトウ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 93-96.
  • 亀甲武志 2018 イトウ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 129.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

稚魚・仔魚・幼魚の形質

稚魚期には体側に7~10個のパーマークを持つが、全長 15 cmほどで不明瞭となり、それより大形の個体では完全に消失する。

参考文献

  • 川村洋司 1989 イトウ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 93-96.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

生態

生息環境

北海道東部及び北部の湿地帯のある河川の下流域や湖沼に多い。

参考文献

  • 亀甲武志 2018 イトウ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 129.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

食性

稚魚期は、水生昆虫や落下昆虫などの流下昆虫を食べる。全長 15 cm前後から魚も食べるようになり、全長 30 cmを超す頃から餌のほとんどが魚になる。以後ずっと魚食を続ける。

参考文献

  • 川村洋司 1989 イトウ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 93-96.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

ライフサイクル

成熟は雄では4~6年、全長 40 cmで始まり、雌では6~8年、全長 60 cmほどで始まる。20歳以上の個体がいる。

孵化した仔魚は産卵床にしばらくとどまり、7月末~8月上旬に稚魚として浮上する。稚魚は夜間に盛んに流れ下りながら散らばり、浅い瀬に定着した個体は流れに定位する。

参考文献

  • 川村洋司 1989 イトウ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 93-96.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

産卵

産卵期は春で、北海道では4~5月である。あまり落差のない本流上流域や中小の支流に遡上し、浅くて流れの速い平瀬に雌が産卵床を掘って、その中に産卵する。

体内卵数は全長 70 cmのもので約3000粒、全長 90 cmでは5000粒ほどである。多回産卵魚で、産卵後も死ぬことなく数年に渡って産卵を繰り返す。

産卵期の雄の攻撃性は極めて強く、雌を巡って優位となった雄は、劣位の雄を徹底的に追い払う。その結果、産卵は常に雌雄1尾ずつで行われ、1尾の雌の産卵に同時に複数の雄が放精することはない。この完全な番産卵のためか、雄の1回の放精量は少なく、放精により水が白濁することはほとんどない。

ちなみにイトウの精巣はほかの多くのサケ科魚類と比較して、極めて小さい。

産卵床で見られる番は、通常雌の方が雄より大きく、体長が倍近くあることも珍しくない。また大型の雄では体後半が鮮やかなオレンジ色の婚姻色を呈するが、全長 40 cm程度の小形の雄では、雌と同様にほとんど婚姻色をあらわさずわずかに赤みがかかる程度である。

雌は卵を5~6回に分けて産むが、1ヵ所に連続して産むことは稀で、場所を変えて2~3ヵ所に産むことが多い。すべての卵を産むのに2~3日を要し、この間雌雄ともに相手をしばしば変えることが観察されている。産卵終了後は速やかに下流へ移動し、産卵床付近にはとどまらない。

参考文献

  • 川村洋司 1989 イトウ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 93-96.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

その他生態

本種はイトウ属の中では例外的に降海性があり、生後2年目の春以降に強い海水適応性を示す。

サハリンでは餌環境が良好な海に降りる。北海道北部では約3歳で一部が沿岸域に降海するが、多くは汽水域に限られる。

参考文献

  • 川村洋司 1989 イトウ, 川那部浩哉、水野信彦(監修) 山渓カラー名鑑 日本の淡水魚. 山と溪谷社. p. 93-96.
  • 亀甲武志 2018 イトウ, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 129.

最終更新日:2020-08-21 ハリリセンボン

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