- 解説一覧
- オオタナゴ(Acheilognathus macropterus)について

オオタナゴ(Acheilognathus macropterus)
【IUCN】評価するだけの情報が不足している種
- 【 学名 】
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Acheilognathus macropterus (Bleeker, 1871)
基本情報
- 大きさ・重さ
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タナゴ類最大で、体長 15 cmに達するものがいる。
参考文献
- オオタナゴ 2018 武内啓明, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 95.
最終更新日:2020-07-14 ハリリセンボン
- 分布
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導入経路は不明だが、2000年頃から霞ヶ浦で確認されるようになり、茨城県、千葉県、東京都の利根川流域を中心に分布を拡大。
自然分布域は中国、韓国、ロシア、ベトナムである。
参考文献
- オオタナゴ 2018 武内啓明, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 95.
- 2020 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑 - 書籍全体, 北村淳一(著) 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑. 山と渓谷社. .
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- 保全の取り組み
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「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(通称:外来種被害防止法)」により、特定外来生物に指定されている。指定地域内の生きた個体を許可なく、移動、飼育、放流することはできない。
参考文献
- 2020 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑 - 書籍全体, 北村淳一(著) 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑. 山と渓谷社. .
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- 学名の解説
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macropterusはギリシャ語で「大きくて長い鰭」を意味する。
参考文献
- 2020 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑 - 書籍全体, 北村淳一(著) 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑. 山と渓谷社. .
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- 和名の解説
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大きなタナゴを意味する。
参考文献
- 2020 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑 - 書籍全体, 北村淳一(著) 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑. 山と渓谷社. .
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- 分類学的位置付け
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コイ目 コイ科 タナゴ属
参考文献
- オオタナゴ 2018 武内啓明, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 95.
- 2020 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑 - 書籍全体, 北村淳一(著) 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑. 山と渓谷社. .
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- 人間との関係
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朝鮮半島産のオオタナゴの報告が1939年にあり、本報告では概ね形態や生活史は似るが、卵形は北方の個体群は長く、南方は球形である。さらに南方の個体群は、主にタガイを利用し、まれにイシガイを利用する。本種の地域集団間で、卵形が多様に分化し、産卵生態が多様化している可能性がある。
本種は、2020年現在、利根川水系の河川や湖沼で在来種のアカヒレタビラとタナゴと同所的に生息している。本種は2000年頃に侵入・定着し、その後急激に個体数を増加させ、2007年頃には一部地域で在来2種の個体数を逆転し、在来2種が減少したことが観察されている。
特に本種は産卵期が春であり、産卵母貝種や微生息場所を巡る競争により、在来2種が繁殖に成功せず排除されてしまった可能性がある。利根川水系において在来2種は2020年現在、まれにしか確認することができなくなっており、絶滅が危惧されている。同じタナゴ類でも、外来種の放流は、在来種を競争排除などにより減少・絶滅に導くため危険である。
参考文献
- 2020 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑 - 書籍全体, 北村淳一(著) 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑. 山と渓谷社. .
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形態
- 成魚の形質
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体高はタナゴ類の中では高い方で、口ひげは短く、側線は完全である。鰭条数は、背鰭において不分枝軟条が3本と分枝軟条が15~19本、臀鰭において不分枝軟条が3本と分枝軟条が12~15本で、両鰭の分枝軟条は日本のタナゴ類の中で最多である。側線鱗数は35~38枚で、側線上方横列鱗数は6枚、側線下方横列鱗数は5枚である。胴部中央部から尾鰭の付け根にかけて青色の長い縦帯がある。鰓蓋の上部後ろのやや離れた位置に青色の斑点がある。稚魚期の背鰭の前部に濃い黒色の斑点がある。
雄の婚姻色として、背鰭は上縁部が黒色となる。臀鰭は下縁部から白色帯・黒色帯となり、残り部分は透明感が強い。腹鰭は全体が薄い黒色となる。背鰭と臀鰭の鰭条は、それぞれ基部から黒色・白色・黒色・白色・黒色(さらに背鰭鰭条の残り部分は透明感が強い)となり、そのことにより両鰭の全体に2本の白色の点列が現れる。体において胴部から尾部にかけて青色、腹部は桃色、下腹部は前部が薄い黒色になる。
象徴的な特徴は、臀鰭の下部からの白色帯・黒色帯で構成される縞模様、体高が高く体形が菱形で、背鰭と臀鰭が長いことである。
参考文献
- 2020 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑 - 書籍全体, 北村淳一(著) 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑. 山と渓谷社. .
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- 卵の形質
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鶏卵形で、長径は平均 2.5 mm、短径は平均 1.4 mmである。
参考文献
- 2020 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑 - 書籍全体, 北村淳一(著) 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑. 山と渓谷社. .
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生態
- 生息環境
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湖沼や河川、農業水路に生息する。河川や農業水路では主に流れが緩いか、ほとんどない場所に生息する。
「たまり」や「ため池」など流れのほとんどない場所でも生息できる「止水適応種」か、流れのあるところに主に生息する「流水生種」かどうかは分からない。
また流速的には、おそらく流れの緩い場所で生息・産卵する「緩流速種」である。
参考文献
- 2020 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑 - 書籍全体, 北村淳一(著) 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑. 山と渓谷社. .
最終更新日:2020-07-14 ハリリセンボン
- 産卵
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産卵期は春の4~7月で、盛期は5~6月である。雌は産卵管を平均 63 mm(4~93 mm)伸ばして、貝の出水管から挿入し、卵を貝の鰓内に産みこむ。霞ヶ浦周辺での産卵期は4~8月で、産卵母貝として主にイシガイを利用する。
仔魚は卵黄を約1ヵ月かけて吸収し、全長約 8 mmに成長してから、貝から泳ぎ出てくる。泳ぎ出た稚魚は、障害物の下流で群れているのが観察される。翌年の春には、体長約 33 mm以上になり、体長 55 mm以上で成熟する。寿命は、長くて3年ほどである。
タナゴ類の中では、完熟卵保有時の産卵管長が日本に生息する種の中で最も長い。この傾向は、日本ではイシガイ目二枚貝類の中でかなり大きな殻長を持つイケチョウガイとヒレイケチョウガイとの交雑種を産卵に利用していることから、大型の貝類への産卵適応と推測される。
参考文献
- オオタナゴ 2018 武内啓明, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 95.
- 2020 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑 - 書籍全体, 北村淳一(著) 日本のタナゴ, 生態・保全・文化と図鑑. 山と渓谷社. .
最終更新日:2020-07-14 ハリリセンボン
- その他生態
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原産地はアムール川水系~ベトナム北部のユーラシア大陸東部、海南島である。原産地で¨A. macropterus¨とされているものは、複数種の可能性があると考えられている。
参考文献
- オオタナゴ 2018 武内啓明, 中坊徹次(著) 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z, 日本の魚類館. 小学館. p. 95.
最終更新日:2020-07-14 ハリリセンボン