- 解説一覧
- ワラスボ(Odontamblyopus lacepedii)について
ワラスボ(Odontamblyopus lacepedii)
【環境省】絶滅の危険が増大している種
- 【 学名 】
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Odontamblyopus lacepedii (Temminck & Schlegel, 1845)
基本情報
- 大きさ・重さ
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・成魚全長 :400 ㎜程度まで成長する
・卵の大きさ:長径 2.5 ㎜ 短径 0.6 ㎜
参考文献
- 久納洋一 2000 ワラスボ類, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 167-168.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
- 分布
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長崎県大村湾、諫早湾、有明海;アムール川、朝鮮半島西岸・南岸、遼寧省~海南島・広西省の中国沿岸、台湾
参考文献
- 明仁@坂本勝一@池田祐二@藍澤正宏 2013 ハゼ亜目, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 1347-1608.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
- 生息状況
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環境省レッドリスト2019では絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されている。
分布パターンが有明海に生息するほかの数種の魚とほぼ同じで、日本と東アジアが陸続きであった時代の名残りを残す遺存種である可能性が高い。ワラスボは限られた海域にしか生息しない希少な種であるが、その生息域は諫早湾干拓に代表される人為的影響でしだいに狭められている。
参考文献
- 久納洋一 2000 ワラスボ類, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 167-168.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
形態
- 成魚の形質
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体は細長く、灰色がかった赤紫色をしている。成魚の眼は退化的で小さい。両顎の犬歯は強くて長く、露出する。腹鰭は吸盤状で膜蓋がある。胸鰭上部に糸状の遊離軟条があるのが特徴。
参考文献
- 明仁@坂本勝一@池田祐二@藍澤正宏 2013 ハゼ亜目, 中坊徹次(編) 日本産魚類検索. 東海大学出版会. pp. 1347-1608.
- 松井彰子 2018 ワラスボ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 393.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
- 稚魚・仔魚・幼魚の形質
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人工採卵し、水温約28℃で受精後3日を経て孵化した卵黄仔魚は全長(以下略) 3.3 ㎜。
天然採集によると、 4.0 ㎜の前屈曲期仔魚では体高は全長の16%。上下両顎、消化管が発達している。頭長は全長の29%。眼径は頭頂の27%。肛門は体の前部で全長の41%のところに開く。腹腔には鰾がある。下尾骨と臀鰭鰭条の原基形成がはじまる。黒色素胞は少なく、腹部から尾部までの体腹縁の3か所に見られる。筋節数10+24。
7.0 ㎜の後屈曲期仔魚では、体は側扁して、尾部が細長くなる。眼は縮小して眼径は頭頂の20%。第1背鰭6、第2背鰭33、臀鰭24、尾鰭定数の鰭条が見られる。尾鰭基部にも黒色素胞が現れる。浮遊生活を送る。
15.0 ㎜の稚魚では体幅が増して、体は丸みを帯びてくる。体は伸びて体高は全長の4%。眼は縮小して皮下に埋没しはじめる。各鰭はそれぞれ鰭条定数を備える。左右の腹鰭は合わさって杯形をなす。尾鰭後端は鋭く尖る。浮遊から底生に移る。
参考文献
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
生態
- 生息環境
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河口域~内湾の泥干潟に深さ 30 ㎝ほどの孔を掘って生息する。
生息地の干潟は泥の粒が非常にこまかく、人が入ると膝から腰あたりまで没してしまうほどにやわらかくて深い。生息孔には、干潟表面に開いた複数の入り口があり、入り口から伸びる曲がりくねったトンネルは泥中で連結している。
参考文献
- 松井彰子 2018 ワラスボ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 393.
- 久納洋一 2000 ワラスボ類, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 167-168.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
- 食性
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貝類や魚類、甲殻類、頭足類を食べる。
参考文献
- 松井彰子 2018 ワラスボ, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. p. 393.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
- ライフサイクル
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産卵期は6~9月で、生息孔で産卵すると考えられている。生まれた直後は全長約 3.5 ㎜で、ふつうの魚と同じように眼があり、河口周辺で浮遊生活をしている。眼は成長とともに退化し、全長 20~30 ㎜で表皮の下に埋もれる。このころから底生生活に移る。寿命は2年以上で、全長 400 ㎜程度まで成長する。
参考文献
- 久納洋一 2000 ワラスボ類, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 167-168.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
- 活動時間帯
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潮が満ちてきて泥干潟が海に沈むと、生息孔から出て周辺をさまよい、貝、魚、甲殻類などまわりにいる生物を食べているようである。
参考文献
- 久納洋一 2000 ワラスボ類, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 167-168.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
関連情報
- 漁獲方法
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ワラスボは古くから有明海周辺の人びとに賞味されている。伝統的な干潟漁具のひとつに、「すぼかき」というものがある。竹の先にJ字形の鉄鈎がついた長さ 1.3 mほどの道具で、これを使い泥干潟中のワラスボを掻いて獲る。
また、ワラスボは網漁具で混獲されるが、船上に揚げられても長時間生きていて、まわりの魚などにかみついている。
参考文献
- 久納洋一 2000 ワラスボ類, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 167-168.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
- 味や食感
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ワラスボは煮つけでも食べるが、ほとんどは干物にしてから空揚げにしたり、あぶったりして食べる。干物は、内臓を取り除いてから、洗濯機で洗い粘液を除去し、その後乾燥してつくる。干物は、珍味として土産品店などで売られている。
参考文献
- 久納洋一 2000 ワラスボ類, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. pp. 167-168.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん