- 解説一覧
- ハリセンボン科(Diodontidae)について
基本情報
- 大きさ・重さ
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成魚全長:多くの種は体長 40 ㎝以下
参考文献
- 松浦啓一 2000 ハリセンボン科, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 193.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
- 分布
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全世界の暖海域
参考文献
- 土居内龍 2018 ハリセンボン科, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. pp. 484-485.
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- 和名の解説
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ハリセンボン科の和名は体表にある多数の棘が「針」に見えるので、「針千本」と呼ばれるようになった。
参考文献
- 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .
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- 分類学的位置付け
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属に関する分類や系統関係については、統一した見解は存在しない(Leis, 2006)。しかし、大半の研究者は、体表のほとんどの棘を立てることができる種を Diodon (ハリセンボン属)に分類している(Leis, 1978, 2006)。また、単型属(1種のみから構成される属)の Allomycterus McCulloch, 1924 、 Dicotylichthys Kaup, 1855 、 Lophodiodon Fraser-Brunner, 1943 及び Tragulichthys Whitley, 1931 は立てることのできる棘と不動性の棘の両方をもっている。
Leis, J. M. 1978. Systematics and zoogeography of the porcupinefishes (Diodon, Diodontidae, Tetraodontiformes), with comments on egg and larval development. Fishery Bulletin, 76: 535-567.
Leis, J. M. 2006. Nomenclature and distribution of the species of the porcupinefish family Diodontidae (Pisces, Teleostei). Memoirs of Museum Victoria, 63: 77-90.
参考文献
- 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .
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形態
- 成魚の形質
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体は楕円形を呈し、多数の棘に覆われる。ハリセンボン属ではほとんどの棘は2根を備え、立てることができるが、ほかの属ではほとんどの棘は3根を備え、立てることができない。
すべての鰭に棘を欠き、軟条のみをもつ。背鰭と臀鰭は体の後部に対在する。腹鰭はない。鼻器は短い管となり眼の前方の体表に突出する。鼻器には開口部が2個ある。上顎と下顎に強大な歯板が1枚ずつある。歯板の中央部に縫合がない。鰓孔は胸鰭基部の前方にあり、裂孔状である。体内にある膨張嚢に水や空気を飲み込んで体を膨らますことができる。
ハリセンボン科は形態的な特徴や体を膨らませることができる点でフグ科に似る。しかし、ハリセンボン科は体に強大な棘をもつが、フグ科の体表の棘は極めて小さい。また、ハリセンボン科の上顎と下顎にある歯板は1枚であるが、フグ科では2枚である。
参考文献
- 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .
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- 稚魚・仔魚・幼魚の形質
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ハリセンボン DIodon holocanthus の仔稚魚、とネズミフグ D. hystrix の仔魚およびイシガキフグ Chilomycterus reticulatus の稚魚について知られている。
卵発生上の顕著な特徴は発生後期に胚体の体前部と卵黄を包む皮嚢が形成されることであり、胸鰭も出現する。孵化仔魚の体前部と卵黄は皮嚢を被っているが、尾部は皮嚢から露出して長く、通常の仔魚のように仔魚膜鰭がある。油球は集って卵黄の後端下にある。
ハリセンボン科の特徴の1つである長い棘状鱗はハリセンボンでは仔魚期の背鰭・臀鰭に定数に近い鰭条が出現する時期(全長 5.4 ㎜)に小瘤状の基底盤を伴う棘状鱗として尾柄部を除く全身に出現し急速に発達する。棘状鱗の形成は直達型である。鰭の形成はP₁→A・D→Cの順に進む。孵化直後から胸鰭は大きく、鰭条の出現も胸鰭が最も早い。背鰭と臀鰭は仔魚膜鰭が3つの鰭に分化した後に同時にはじまり、尾鰭は最も遅い。
参考文献
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- 卵の形質
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ハリセンボン DIodon holocanthus とネズミフグ D. hystrix の卵は球形の多油球浮性卵で卵径の範囲は 1.7~2.1 ㎜で、径 0.02~0.3 ㎜の油球が10~50個がある。発生中に油球の癒合はほとんど起こらない。
参考文献
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生態
- 生息環境
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ヤセハリセンボンのみは海洋の表層に生息するが、ほかの種は底生性である。多くの種が 50 m以浅のサンゴ礁や岩礁に生息するが、藻場、砂泥底、砂礫底に出現する種もいる。一部の種は、ときに沖合いを大きな群れで移動することがある。
参考文献
- 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .
- 松浦啓一 2000 ハリセンボン科, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 193.
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- 産卵
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ハリセンボン科の繁殖行動が野外で観察されたことはないが、水槽内での産卵については研究がある。現在までの研究によると、分離浮性卵を産むのはハリセンボン(坂本・鈴木, 1978)、ネズミフグ、イシガキフグ、 Chilomycterus antennatus 、 C. schoepfi 及びメイタイシガキフグ(Doi et al., 2015)である。Allomycterus pilatus と Diodon nicthemerus は沈静付着卵を産む(Doi et al., 2015)。
Doi, H., T. Ishibashi and H. Sakaki. 2015a. Spawning and rearing a porcupine puffer Cyclichthys orbicularis (Diodontidae, Tetraodontiformes) in captivity. Aquatic Science, 63: 207-212.
Doi, H., T. Sonoyama, Y. Yamanouchi, K. Tamai, H. Sakai and T. Ishibashi. 2015b. Adhesive demersal aggs spawned by two southern Australian porcupine puffers. Aquatic Science, 63: 357-359.
坂本隆志・鈴木克美. 1978. 水槽内で観察されたハリセンボン Diodon holacanthus の産卵習性と初期生活史. 魚類学雑誌, 24: 261-270.
参考文献
- 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん
- その他生態
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幼魚のときに海の表層で大きな群れを作る種もいるが、成魚となり底生性になると通常は単独で生活する。
参考文献
- 松浦啓一 2000 ハリセンボン科, 日高敏明(監修) 中坊徹次、望月賢二(編) 日本動物大百科6:魚類. 平凡社. p. 193.
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関連情報
- 味や食感
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ハリセンボンやネズミフグなどは沖縄などでは食用にされている。主に汁物や揚げ物などで食され、特に皮をはぎ、身と肝臓を味噌で仕立てたアバサー汁は沖縄の名物。
参考文献
- 2017 日本産フグ類図鑑 - 書籍全体, 松浦啓一(著) 日本産フグ類図鑑. 東海大学出版部. .
- 土居内龍 2018 ハリセンボン科, 中坊徹次(監修) 中坊徹次(編) 小学館の図鑑Z 日本魚類館 ~精緻な写真と詳しい解説~. 小学館. pp. 484-485.
最終更新日:2020-08-21 ひろりこん