- 解説一覧
- アサリ(Ruditapes philippinarum)について
アサリ(Ruditapes philippinarum)
- 【 学名 】
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Ruditapes philippinarum (Adams & Reeve, 1850)
目次
基本情報
- 和名の解説
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①『大言海』に「求食貝」(アサリガイ)の意とある。また、この貝を「漁る(あさる)」ことから転じた。
②『本朝食鑑』に浅い水にすむ貝の意とある。
③『箋注和名抄』にサリは砂利、すなわち砂中にいる貝の意とある。
④『日本語原学』にアヤスジアリ(文線在)が転じたものとある。
参考文献
最終更新日:2020-09-14 En
- 人間との関係
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季題は<春>
「母あって 心たらふや 淺蜊汁 征矢」
「淺蜊とる さゞなみ叩く ふくら脛 稻村」
「淺蜊籠 蓑刎ねあげて 横抱きに いさを」
「湖底の しかと手応え 浅蜊掻き 沢木欣一」
『魚鑑』に「甘寒(あまくひややか)毒なし」とあり、『和漢三才図会』に「各地どこにでもいるが、ただ摂津・泉州・播州には希にしかいない」「竹串に貫いて日に曝し、他地方に出荷する」とある。
『大和本草』に縄文時代の貝塚から一番多く発見されたのが、アサリの貝殻であると記される。古代日本の重要な食料であり、焼いた形跡があることから、すでに焼いて食べることが一般化していたと思われる。
潮干狩りの主役でもあり、春の彼岸の風物詩といわれる。
江戸時代、深川は貝類の特産地として有名だった。「深川めし」はいまに残る深川名物。
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形態
- 成体の形質
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二枚貝。貝殻は楕円形に近い三角形で、よく膨らむ。殻頂は前方に傾く。殻表には、殻頂から細かい放射状の肋(ろく)が多数走る。肋は、後方では少し粗くなる。また、殻頂を中心に同心円状に走る成長脈と交差して、布目状となる。
殻表は通常淡い灰褐色で、不規則な山形の模様がある。殻色や模様は個体変異が著しく、左右の殻で模様が異なる場合もある。殻の内面は白色。
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- 似ている種 (間違えやすい種)
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近似種のヒメアサリ Ruditapes variegata と非常によく似ている。
ヒメアサリは、殻の膨らみが弱いこと、殻表の放射肋が細かいこと、模様は黒点斑のみであること、殻内が紅色であることなどで区別できる。
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生態
- ライフサイクル
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一般に産卵期は春と秋の2回であるが、北海道東部のサロマ湖、釧路などでは夏が産卵期となる。
孵化直後の幼生は、殻長 100 μm前後。孵化後2〜3週間、浮遊生活を送る。殻長 200 μm前後に成長すると、底生生活に移行する。
稚貝が着底するのに適した場所は、渦流が生じやすく、干潮線の上下 2 m以内で、1日の最高干出時間が2時間以下の干潟地域である。また、着底場所の底質は泥が少ないほどよく、泥質が30%を超えると定着稚貝の数は激減する。
着底後の稚貝は、初め糸状の足糸を伸ばして海底の砂礫などに付着しているが、やがて海底の砂中に潜り込む。着底後はあまり移動しないが、稚貝のほうが成貝よりよく動き回ると言われる。
殻長 2 ㎝前後の若貝の30日間の移動距離は砂質域で 5〜6 m、砂礫域で 2 m以下であることが知られている。ただし、風波や潮流によって長距離を運ばれることがある。
生育状態は、地域やその年の水温によって差がある。厚岸湖では生後1年で、殻長 9 ㎜前後、2年で 21 ㎜前後、3年で 34 ㎜前後、4年で 41 ㎜前後に成長する。
ふつう、水温15℃以上から成長がよくなり、30℃近くになっても成長を続ける。しかし、水温10℃以下では停滞する。したがって、おもに春から秋に大きくなり、冬はほとんど大きくならない。
通常、雄は殻長 25 ㎜、雌は殻長 30 ㎜前後から成熟し始める。
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- 特徴的な行動
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砂中に潜るときは貝殻の間から砂中に足を伸ばし、その先端に血液を集めて膨隆させ、それを錨にして本体を引き入れる。このとき、殻の中に溜めた海水を吹き出すことで砂の締まりを緩めている。
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関連情報
- 味や食感
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秋から春にかけてが旬。生食には向かないが、加熱すると独特の香りと旨みがでる。
火を通し過ぎると硬くなるので、佃煮にするとき以外は火加減に注意する。
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