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ホタテガイ(Mizuhopecten yessoensis)の分類 Pectinidae
ホタテガイ(Mizuhopecten yessoensis)の概要 Mizuhopecten

ホタテガイ(Mizuhopecten yessoensis)

【 学名 】
Mizuhopecten yessoensis (Jay, 1857)

基本情報

大きさ・重さ

・殻長:20 ㎝
・殻高:20 ㎝

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最終更新日:2020-09-15 En

分布

寒海性で、東北から千島の太平洋岸および日本海に分布する。

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和名の解説

一方の殻を帆のように水面に立て、海上を走るように泳ぐという俗説による。

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別名・方言名

アキタガイ、ホタテ(混称)

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人間との関係

季題は<夏>
「糶売(ちょうばい)の かたへに濡れて 帆立貝 上田晩春郎」
「黒海苔は 跡へ泳ぐや 帆立貝 谷羊」
「帆立貝の 帆にさからへる 潮かな 細木芒角星」
「帆立貝 飽食なれば 砂噴きぬ 吹田孤蓬 」

『和漢三才図会』には「口を開いて一つの殻舟の如く、一つの殻帆の如し、殻に乗って走る。故に帆立貝と名づく」と記されている。
また、『魚鑑』に「俗にあふぎがひといふ。清俗海扇といふ。陸奥蝦夷海中に産す。その肉未だ見ず」とある。

北海道の奥尻島でホタテガイが豊漁のときは寿都では不漁で、逆に寿都が豊漁のときは奥尻島が不漁になるという。これは、ホタテガイが帆を立てて集団で移動するためだというアイヌの説話による。

ホタテガイ類は世界各国で賞味され、食用貝の代表格として知られているが、日本で一般的に食べられるようになったのは、養殖技術が発達した戦後のことである。
江戸時代の文献を見ると、たとえば『本朝食鑑』には「味は佳くない。海俗(うみのたみ)も之を食べない」とあるように、貝柱のおいしさに関する記述はあまりなく、なかにはよく似たイタヤガイと混同しているものもある。
伝説などに登場することはあっても、当時の東北以南の人には、なじみの薄い存在であったようである。

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形態

成体の形質

二枚貝。殻は扇形で、殻の背縁前後に耳状の突起がある。左右の貝殻はほぼ同形だが、右殻のほうが膨らみが強く、若干大きい。左殻はほとんど平坦である。
左右の殻とも、殻頂から腹縁に向かって放射状の肋(ろく)が25本前後走っている。右殻の放射肋は太く強いが、左殻の放射肋は細く、表面に細かいうろこ状の模様が刻まれている。
殻表外面は、右殻が白色または淡黄白色。左殻が紫褐色である。殻の内面は、左右の殻とも白色。
また、ハマグリなどの二枚貝は貝柱を2つ持つが、ホタテガイでは軟体部中央に大きな貝柱を1つ持つだけである。
外套膜縁(ヒモ)上には20〜30個の黒い眼が付いており、光の強弱や動くものによく反応する。また、外套膜の外縁には、感覚器を備えた多くの触手を持つ。

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生態

生息環境

潮通しのよい水深 70 m以浅の砂泥底、あるいは砂礫底に生息しており、水深 30 m以浅に多い。
生息水温は22℃以下だが、20℃以上では成長が停止する。23℃以上の水温が続くと斃死個体が出現し始め、25℃を超えると全滅する。また、低塩分にも弱く、淡水中に入れると60秒前後で死亡する。

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食性

エラには細かい繊毛が密生し、この繊毛を動かして水流を起こして殻内に新鮮な海水を通過させ、海水中に浮遊する珪藻などの植物プランクトンや有機懸濁物をエラで濾し取って食べる。

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ライフサイクル

産卵期は春で、水温が4〜8℃のときに産卵する。産卵盛期は稚内で5月、サロマ湖で5〜6月、陸奥湾で3〜4月、岩手で4〜6月。
水温7〜10℃で受精後5〜7日経つと 120 μm前後のベリジャー(Veliger)幼生となり、浮遊生活を行う。幼生は、日中は中層から下層に多く、夜間は上層から表層に多く集まる。受精後35日前後で殻長 260 μmの稚貝となり、貝殻の蝶番部から糸状の足糸を出して海底の礫や海藻などの基質に付着する。
付着後の成長は顕著で、1日あたり 100〜150 μm程度大きくなる。付着後2〜3ヶ月で殻長 10〜20 ㎜になると足糸を切断し、底生生活に移行する。
生後1年で殻長 2 ㎝前後、2年で 5〜8 ㎝、3年で 6〜12 ㎝、4年で 7〜15 ㎝、5年で 8〜15 ㎝に成長する。殻長 5 ㎝前後から成熟し始める。
成長は春と秋によく、夏の高水温期や冬の低水温期に悪い。

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特徴的な行動

海底では膨らんだ右殻を下にし、平らな左殻の上に薄く砂を被って生活する。
通常は蝶番と反対側の貝殻の開口部を潮上に向け、貝殻をわずかに開けているが、ダイバーなどが近づくと貝殻をぴったりと閉じてしまう。
また、ヒトデやタコなどの外敵に遭遇したり周辺環境が悪化すると、貝殻の耳状突起の両側から勢いよく水を吹き出して短距離を遊泳することができる。

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関連情報

漁獲方法

従来、貝桁網によって漁獲されていたが、近年では約半分が養殖によって生産されている。

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養殖方法

ホタテガイの浮遊幼生は、着底期に海底の転石や海藻などの基質に付着する。
これを利用し、ポリエチレン製の網袋に杉の葉や古くなった刺網などを入れてつくった採苗器を海中に吊るして付着稚貝を採集する。この稚貝を、水深 10 m前後の潮通しのよい場所に吊るした網籠の中に入れて中間育成する。その後、殻長が 2 ㎝前後になった大型種苗を適地に放流、あるいは養殖する。
養殖方法は、従来ホタテガイ殻頂両側の耳状突起に穴を開けて紐で吊るす方法で行われていた。しかし現在では、海面から垂らしたロープにいくつもの籠を一列に吊るし、その籠にホタテガイを入れる方法が一般的である。

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味や食感

甘み、旨みの塊のような食品で、大きな貝柱だけでなく、ヒモ(外套膜)も食べられる。
生の新鮮な風味を味わうなら、刺身やすしだねに。磯の香りを楽しむなら、殻付きのまま火にかける貝焼きがよい。干し貝は、もどして中華スープや煮込みなどに用いる。

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その他

木の年輪のように貝殻の上にある同心円状の線は、成長が停滞しているときに現れるため、この線の数を数えることによって貝の年齢を知ることができる。

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種・分類一覧