- 解説一覧
- Anadara broughtoniiについて
目次
基本情報
- 人間との関係
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季題は<春>
「赤貝を 家づとにせむ 鳥羽の海 志摩芳次郎」
「選挙車 おらぶ万の 赤貝舌垂らし 沖田佐久子」
「手秤に かけて赤貝 三つ買う 北田桃代」
『本草綱目』に「肉はたいへん甘い。それで字は甘につくる。炙って食べると身体によい。便血を治し消渇を止める」とあり、『大和本草』には「蛤類ノ内ニテ味尤美ナリ」とある。
『魚鑑』には「摂津泉播磨の海涯、浅き処ときどき百万群をなす。これを赤貝山といひて、漁人たまたまこれにあへば大利を得」とある。
参考文献
最終更新日:2020-09-14 En
形態
- 成体の形質
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二枚貝。貝殻は卵形でよく膨らむ。左右の貝殻はほぼ同形で両殻頂は離れているため、蝶番の部分を上にして前、または後ろから見るとハート型に見える。殻は薄く脆い。
蝶番は短い櫛状の歯を持っている。殻の表面に、はっきりした放射状の肋(ろく)が42〜43本走る。この肋間の溝は、ほぼ同幅。
殻皮は黒褐色のビロード状で厚く、肋間の溝では短毛状で毛羽立つ。殻表の内外は艶がなく白色。軟体部は赤い。
血液中にヘモグロビンを含むため、血液は赤い。
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- 似ている種 (間違えやすい種)
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近似種にサルボウガイ Scapharca subcrenata 、サトウガイ Scapharca satowi 、ハイガイ Tegillarca granosa などがあり、アカガイの代替種として市場に出荷されている。
貝殻の表面を走る放射状の肋が、サルボウガイでは30〜34本、サトウガイでは38本前後、ハイガイでは17〜18本と、アカガイよりも少ないことで区別できる。
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生態
- ライフサイクル
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産卵期は初夏から秋で、陸奥湾は7〜8月、瀬戸内海や九州では6〜10月に産卵する。
孵化直後の幼生は 150 μm前後で、ベリジャー(Veliger)幼生に変態しながら約1ヶ月の浮遊生活を送ったのち、付着期に入る。このときの殻長は 200〜300 μmで、糸状の足糸を伸ばして水深 20 m前後の海底上の木片や貝殻、海藻などに着生する。
付着幼生は函館では12月下旬、有明海では6月前後に多く観察される。殻長 20〜30 ㎜に成長すると足糸を切り、海底の泥中に潜って底生生活へ移行する。
生後1年で殻長 5 ㎝前後、2年で 7 ㎝前後、3年で 8 ㎝前後、4年で 10 ㎝に達するが、その後の成長は鈍る。
殻長 5〜6 ㎝で成熟し、寿命は10年前後と推測される。
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- 特徴的な行動
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ハマグリやアサリと異なり、アカガイは海水を取り入れる水管を備えていないため、貝殻の尖った後端部分を泥中から海底の表面に出して海水を出し入れしている。
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関連情報
- 養殖方法
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種苗生産や中間育成が行われている。
中間育成は延縄式に吊り下げられた複数の籠にアカガイを入れて蓄養するもので、天然種苗のほか、人工種苗も利用されている。
天然種苗の採苗は、網袋に杉の枝や古くなった網の端きれなどを詰め、それを海中に垂下することによって行う。
また、人工種苗は、飼育水温から数時間のうちに5℃前後水温を上げる温度刺激により、親貝の放卵、放精を促して採卵し、浮遊期幼生を飼育する。2〜3ヶ月後にイタヤガイの貝殻をコレクターにして付着期の稚貝を集める。
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- 味や食感
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刺身、酢の物、和え物など生食に向く。味にクセがなく、歯ごたえも弾力があり、見た目も赤く美しいことから、とくにすしだねとして人気があるほか、日本料理で重用される。
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